文化財に関わる新温泉町民の輪を広げ、また、子どもから大人までの幅広い年代の方に興味・関心を深めてもらうため、町内に数多く分布する文化財を隔月で紹介します。
■第8回湯村の火祭り
毎年8月24日、湯村温泉では子どもたちが松明を振って疫病、悪心を焼きはらい水に流す「湯村の火祭り」が行われます。
この行事の由来ははっきりしていませんが、分かっていることはいくつかあります。まず、松明を振る時のかけ声「ジーロンボ、ターロンボ、ムーギのナーカのクーロンボ」については、「じーろんぼ」は滋賀にある比良山に祀られる次郎坊天狗、「たーろんぼ」は京都の愛宕山に祀られる太郎坊天狗のことではないかとされています。湯村の正福寺にはそれぞれ比良天満宮の社と愛宕社が勧請されており、それぞれの祭事の影響を受けたことが考えられます。「むーぎのなーかのくーろんぼ」は「麦の中の黒ん坊」つまり農作物の病気や虫害を指し、稲の成長を願う「虫送り」と呼ばれる行事と同様に火によって作物に害をなすものを追い払う意味があると考えられます。
また、祭りに先立って護摩祈禱が行われる正福寺には、平安時代に作られたとされる不動明王立像が本尊として祀られています。不動明王は煩悩を焼き尽くす「迦楼羅炎(かるらえん)」を背負い忿怒の形相で人々の悪心を払う仏様です。これらの火にまつわる要素が集合したのが「湯村の火祭り」であると考えることができます。
問合せ:生涯教育課
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