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自治体の皆さまへ

【特集】子どもと向き合う(2)

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兵庫県神河町

たくさんの可能性がある子どもたちを町の光に
ケアステーションかんざき所長 西本寛先生

ケアステーションかんざき設立前より郡内の小児療育に携わってきた西本先生。療育をする上で大切にしていることや子どもたちとの関わり方など、お話を伺いました。

■楽しい雰囲気のなかでさまざまな体験を
障がいの有無に関わらず、楽しい雰囲気のなかで普通のことをいかに普通に体験出来ることが大切だと思うんです。障がいがあって支援が必要だと、本来経験すべきことが何らかの形で出来なかったりするわけです。そこを「何とか経験出来ることはないか」と考えながら日々過ごしています。例えば風を切って走る経験。当たり前のことですが、車イスに乗っている人は風があたる経験をしたことがありません。そこで、自転車の前に車椅子の子が座れる自転車を借りてきて、この子たちを風に触れさせてあげました。そうすると子どもたちは大喜び。

私たち大人は、苦しい経験を乗り越えてこそ得られるものがあるように思いがちですが、幼い子どもたちはその見通しを立てることが出来ません。大人が良いと思ってさせても子どもにとっては苦しい経験だけになってしまい、発達を阻害してしまう可能性があります。楽しい雰囲気の中でちょうど良い難しさに挑戦できる体験をいかに盛り込めるかを大切に活動しています。

■誰とどんな場面で出合わせるか
子どもたちは、いつも支援が必要なわけではありません。例えば高齢者介護が必要な方とケアステーションかんざきに来ている子ども達が触れ合うとします。学校や家では叱られたりする子でも、高齢者の方が話しかけてくれることが子ども達にとってはとても嬉しく、生き生きとしています。一方高齢者は、父親母親としての役割や仕事など社会での役割が少なくなってしまったところに孫世代の子がいると、祖父母としての役割を取戻し、元気になってきます。「支援が必要な子」っていう見方だけではなく、人を癒す力や黙々と作業続けられる力など、良い所もたくさんあるわけです。
「誰と誰をどんな場面で出合わせるか」という事は、私たちの大切な仕事のひとつ。お互いに元気になる場面をいかに作っていくかが療育のひとつでもあります。

■卒業して大人になった生徒たち
通院されている方の中には「うちの子は大人になってもしっかりと生活できるのか」と悩んでいる方もいます。卒業生の中には働いて家庭を作り、子育てをしている人やローンを組んで車を購入し、休日に「先生いつでも乗せたるで」って声をかけてくれる人もいます。もちろんそんな人ばかりではなく、家に引き込もりかけたり、なかなか仕事が続かない人もいます。
私たちの教科書は、ケアステーションかんざきから巣立って社会に出ている卒業生。その子たちが、躓きながらも元気で暮らしている姿が、次のご両親の安心に繋がっていきます。だから悩んでいるご両親に、自信を持って伝えることが出来ます。「大丈夫ですよ」と。

■職員同士のコミュニケーションも大切
所長として、子ども達と関わる職員のコミュニケーションやメンタルヘルスも、小児療育を行う上で大切だと考えています。何かしんどい事があっても、そのまま子どもたちと向き合うのではなく、良い自分で子ども達に向き合おうと。みんなが安心して自分の意見をしっかりと伝えることができる場所であってほしいと思っています。
個性豊かな子がたくさん通うケアステーションかんざきですが、職員も個性派が勢揃い。さまざまな人がいることで良いチームが生まれると考えています。安心して働ける場所をいかに作れるか、そこが私の仕事でもあります。

■子ども達を町の光に
今後、対応していかなければいけない事のひとつに「不登校」があります。全国的にも非常に多くなっており、郡内でも年々増え続け、学校だけで問題を考えるのは難しくなってきています。また、災害時に情報弱者や避難行動が難しい人たちの支援など、郡内のさまざまな担当者が集まって検討もしています。更には外国人労働者の災害時の対応など、日本語が話せない人の対応はどうするかなども課題になってきています。地域の皆さまにご協力いただくことで、突破できることがあるかもしれません。
設立当時、私たちは子どもの療育に一生懸命になり、それだけで精一杯でした。ここまで幅広く運営できるようになったのも、施設の事を大事にしてくれる地域の皆さまの支援があったからです。子どもたちを単に支援するということだけではなく、たくさんの可能性を持っている子どもたちが、町の輝く光になっていくようにみんなでサポートしませんか。

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