■絵本を通じてジェンダーなどダイバーシティを考える
8月18日、豊岡市民プラザで豊岡市オリジナル絵本「みらいへの つばさを ひろげて」の絵本完成発表会を開催し、約100人が参加しました。
絵と文を手掛けた本市出身の絵本作家羽尻利門(はじりとしかど)さんをはじめ、有識者や制作に携わったメンバーなどが登壇し「子どもの頃からのジェンダー・多様性教育について」をテーマにパネルトークや朗読を行いました。
◆絵本ができるまでの背景
市では、これまで子どもたちが個性や好みの違いといったジェンダーや多様性を考えるきっかけとするために、既存の絵本を市内のこども園や幼稚園、保育園に配布してきました。その中で「地域の子どもたちにメッセージを伝えるオリジナル絵本を作りたい」との声が上がりました。
子どもたちと関わっている保育士もプロジェクトメンバーに加わり、子ども目線で、何に関心があるのかを考えながら物語の内容や構成を決めました。オリジナル絵本には豊岡のまちを舞台に自分らしさやありのままの大切さが、コウノトリや人間の家族がそれぞれ子育てをする様子を通して取り上げられています。
◇絵本の中で描いた豊岡の自然の美しさも感じてほしい
・絵本作家 羽尻利門さん一
番大事なことは、ジェンダーギャップやダイバーシティの視点で、絵本に描いているいろんな人物の服装であったり、しぐさであったり、コウノトリと重ね合わせた姿であったり、この絵本をきっかけに考えてほしいと思っています。
また、市から豊岡市の自然の美しさを表現してほしいと依頼されました。なので、豊岡の自然の美しさも感じてほしいです。実は絵本の中に隠し文字や玄武岩の玄さんも隠れています。小さいお子さんと一緒に探して、楽しみながら絵本を見ていただけたらと思います。
◇読み聞かせによって新たな気づきが生まれます
・東京大学学術専門職員 古川郁(ふるかわかおる)さん
この絵本を通して、まず大人がジェンダーやダイバーシティへの理解を深めてほしいと思います。読み聞かせによって子どもとの対話、コミュニケーションを十分に楽しんでほしいです。読み聞かせによる双方向のやりとりから新たな気づきが生まれます。
また、これまでの古いジェンダー観とは違う性別設定をしている部分が大きなポイントになります。読み進めて何か気になるところがあったら、そこに意識を向けてほしいです。絵からもたくさんの発見があるはずです。
◇子どもたちに伝える前に大人が対話を深めて
・プロジェクトメンバー 吉村彩花(よしむらあやか)さん
私は、子どもたちのありのままの姿を大人である私たちが認めていくということが、わざわざ対話をしなくてもジェンダーギャップ解消につながっていくのではないかと考えています。
このプロジェクトに参加するまで、ジェンダーについて深く考えたことはありませんでした。まずはジェンダーやダイバーシティの話を子どもたちに伝える前に、伝える側である大人がジェンダーについて、対話を深めていくということが、大切ではないかと思っています。
※吉村の「吉」は環境依存文字のため、置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。
◇一番大切なことは多様な他者と関わること
・豊岡市教育長 嶋公治(しまこうじ)
今日の学校教育では「共生」が重要な課題。「共生」に一番大切なことは多様な他者と関わることです。いろんな他者に出会っていろんな考え方に触れていくということです。
視点は「個」と「場」の2つです。一人一人が持っている「個」を尊重すること。それぞれに「普通」があり「当たり前」があるということ。その当たり前、普通を教員を含めてみんなが感じること、それが共有されて共感できる「場」を持つこと、この2つだと思います。大人もそうしなくてはいけないと思っています。
◇思い込みの影響を受けても染まらないでほしい
・独立行政法人国立女性教育会館理事長 萩原(はぎわら)なつ子さん
豊岡市は、市長部局と教育部局が連携、協働しながら課題に取り組んでいることが素晴らしいと思います。
子どもの頃からいろんな思い込みの影響を受けても、それに染まらないでほしいという気持ちが強くなったので、絵本を作りたいなと市の担当者につぶやきました。
豊岡市の子どもたちが、性別に関わらず一人一人がコウノトリのように自分自身のタイミングと自分の意思で飛び立ってほしい、そんな思いを込めて絵本を作っています。
◆わくわく絵本ライブ
わくわく絵本ライブでは、羽尻さんとサトシンさんの掛け合いもあり、和やかな雰囲気の中、それぞれ思い入れのある作品の朗読や歌を披露しました。サトシンさんは「大人も子どもも楽しめて、いろいろなことを学べる絵本を作りたい」と話していました。自分らしさやありのままでいることの大切さを考えるきっかけになりました。
◇参加者の声
・とても楽しい絵本ライブでした。
・パネルトークでは、さまざまな視点でジェンダーなどダイバーシティについての意見を聞くことができ、自分自身も考えるきっかけになりました。
・制作への熱い想い等を知ることができて、絵本をより楽しめました。絵でさりげなくジェンダーが表現されており、すばらしいです。
・絵本完成までの話が聞けて良かったです。
作成した豊岡市オリジナル絵本「みらいへのつばさをひろげて」は、市内の学校園、図書館や子育てセンターに配布し、読み聞かせなどで子どもとの対話に活用していきます。
※この記事は、インターンシップの学生で、福知山公立大学清水彩華(しみずいろは)さんに協力いただきました。
問合せ:多様性推進・ジェンダーギャップ対策課
【電話】21-9004
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