今回は、有珠山の研究についてご紹介します。
◆第3回 『書き換わる、有珠山の歴史』
地方独立行政法人北海道立総合研究機構産業技術環境研究本部
エネルギー・環境・地質研究所 廣瀬 亘
普段は美しい景観や豊かな恵みをもたらす一方で、噴火すれば大きな災害をもたらす有珠山は、皆さんにとってなじみ深い山でしょう。
日本有数の活火山である有珠山は、これまで多くの研究者が訪れ、火山活動の研究が行われているので、分からないことはほとんどないと、皆さんは思っているのではないでしょうか?
しかし、そんな有珠山について、近年いくつかの新たな発見と議論が起きています。
1つ目は、これまで知られていなかった噴火の発見です。今から20年ほど前、有珠山の北麓で地質調査をしていた研究者の目が、とある地層に釘付けになりました。「火山灰層の枚数が1枚多い」。江戸時代に起きた噴火の証拠、寛文3年の火山灰と明和5年の火山灰。その間に見たことの無い火山灰が挟まっていたのです。謎の火山灰はその後も、有珠山麓のあちこちで見つかりました。化学組成を調べた結果、この火山灰は歴史書にも記述のない、新発見の噴火で噴出したことが分かりました。この噴火は、17世紀末の噴火として有珠山の火山防災マップや気象庁の解説文に加わることになります。
もう1つは、有珠山の崩壊時期です。有珠湾の辺りにたくさんある小山。これらはかつて山頂周辺にあった岩石が、縄文時代に起きた大きな山崩れで麓まで流れ下ってきたものと習った方が多いでしょう。しかし、山崩れの起きた時代について、土や火山灰などを調べ直すことにより、最近次々と新たな説が提唱されています。真実に近づくためには、今後もさまざまな研究者が研究を続ける必要があります。もしかすると、皆さんの何気ない発見が新たな学説につながる、そんな未来があるかもしれませんね。
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