◆発生が懸念される北海道太平洋沖巨大地震と津波
NPO法人環境防災総合政策研究機構 理事 宇井 忠英
北海道太平洋沖で巨大地震が発生し、太平洋沿岸の各地に津波が襲来する可能性が高まっているといわれています。
今回の話題は「その根拠は何か、地震が発生した時どうするか、日頃からどう備えておくか」です。
▽なぜ巨大地震と大津波発生の可能性が高いといえるのか
駒ヶ岳・有珠山・樽前山などでは過去1万年以内に大噴火が発生し、風下の土壌の上に火山灰が降り積もりました。大津波は沿岸の低地に侵入して砂さ礫れきを置き去りにします。
海岸近くの崖を観察すると土壌の間に火山灰や津波が運び込んだ砂礫層が積もっているのが見つかることがあります(図1)。
近辺の海岸近くの低地をボーリングして津波堆積物を採取し、駒ヶ岳・有珠山・樽前山などの火山灰を特定してボーリング試料に年代尺度を入れるという手法で、巨大地震が発生し大津波が襲来した年代が推定できました。
北海道太平洋沿岸には過去6千500年の間に18回大津波が到達しており、その間隔は340-380年であると分かったのです。最新の大津波襲来は、三陸沿岸に津波が襲来した時の記録から、北海道駒ヶ岳の1640年噴火より前の1611年12月2日だったことが特定できました。
この発見により、直近の大津波襲来からすでに400年以上経過しており、次の大津波襲来が迫っているといえます。
【図1】1611年の大津波襲来を示す津波堆積物
※詳しくは広報紙をご覧ください。
▽西胆振で想定される地震
地震が発生すると気象庁は震源の位置と深さを発表します。
しかし、発表された場所から地震の揺れが発生し続けるのではありません。震源というのは地下で最初に破壊が始まる場所であり破壊は周囲に広がります。破壊に伴う地震の揺れの発生源は移動するため、揺れは強弱を繰り返しながら数分間続きます。
揺れ始めてから1分以上経ってから急に揺れが強くなることもあります。
スマートフォンから緊急地震速報の着信音が流れたら、まず一番に、身の安全を確保しましょう。北海道太平洋沖巨大地震が発生した場合、西胆振での震度は4から5弱程度と予測されています。震度5弱(図2)で棚から物が落ちたり不安定な家具が転倒する可能性がありますが、家屋が居住不能となるような損傷を受けることはないでしょう。
【図2】震度5弱
・大半の人が恐怖を感じ、物につかまりたいと思う
・棚の物が落ちてくる
・固定していない家具が倒れることがある
※詳しくは広報紙をご覧ください。
▽伊達市を襲う津波
2年余り前に配布された津波ハザードマップには、津波シミュレーションの結果を基に想定される津波の浸水範囲と浸水水位を6段階の色分けで表示しています。
シミュレーションを行うためにはどの範囲で津波が発生するか仮定する必要があります。プレート境界面の破断が三陸・日高沖から始まるケースと十勝・根室沖から始まるケースの2通りを想定してシミュレーションが行われました。
津波が陸地に侵入してどこまで流れ広がるかを演算するために10m四方ごとに標高を特定し、デジタルデータを使いました。
シミュレーションの結果、伊達市沿岸に到達する津波の高さは最大8メートル程度、最初の津波が来るのは約60分後になりました。
実際の津波は必ずシミュレーション通りになる訳ではないこと、秒速10m程度で海岸から遡ることを踏まえてハザードマップを参考にしながらリスクを判断することが必要です。
シミュレーションでは建物があることは無視していますので、実際は建物を避けて津波が侵入します。また、川の部分が白いのはシミュレーションの対象になっていないためです。障害物がないため津波は陸地よりも侵入しやすいでしょう。
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市ホームページで公開中
※市公式LINEからも確認できます
▽津波からの避難
大津波警報が出たら津波に襲われそうな場所から避難を開始しましょう。津波警報が出ると第1波が観測された場所や高さが発表されます。
しかし、第1波が最大とは限りません。警報が解除されるまで避難し続けることが肝心です。
ハザードマップには代表的な避難ルートが紫色の矢印で表示されています。一時的な避難場所や津波避難ビル・避難所も表示されています。
市内で筆者が一番懸念しているのは西浜町です。
JR室蘭本線に遮られて避難路が限られている現状のままでは、大津波警報が発令されたとき避難しきれないかもしれないのです。
▽日頃備えておくこと
津波ハザードマップを参考にして大津波警報が発令されたらどこに避難するか、考えておいてください。
いろいろな季節や時間帯に避難行動を試してみることもお勧めです。日中、家族が仕事や学校などでばらばらになっていても迎えに行くことなく、各自がどこに避難するかを決めて共有しておくことも必要です。
自力で避難できない要支援者を誰が助けるか、ご近所で話し合って決めておきましょう。
ペットも連れて行きましょう。
津波ハザードマップには避難のときに持っていくべきものが示されていません。
半日くらいは避難し続けることを想定して、空腹を満たすおやつと飲料水・懐中電灯、季節によっては防寒具が欠かせません。
また、津波の浸水水位が3mを超えると戸建て住宅が流されてしまう可能性があります。そうした懸念がある場合はマイナンバーカードやクレジットカード、現金、常時服用している薬やお薬手帳なども持ち出す必要があります。
これらの必需品を忘れないようにリストを作り、(避難時に両手が使える)背負えるバックに詰めて持ち出せるよう、今のうちから備えておきましょう。
詳しくは、市ホームページの「災害から身を守るために〜伊達市防災ガイド〜」をご確認ください。
問合せ:危機管理課危機管理係(市役所2階)
【電話】82-3162
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