●「年をとっても施設には入りたくない」方へ
日々ご高齢の方々と接していますと、90歳前後の超高齢を生きることはほんとうに大変だと感じます。永年苦楽を共にしてきた体はあちこちに不調を抱えていますし、体力の低下もあっという間に進みます。平成の時代、介護疲れで心中や自殺が社会問題化したことで介護保険事業が導入され、高齢者を受け入れる施設も増えました。以前より福祉・介護サービスも充実してきているのですが、ただ漠然と「施設には入りたくないな~」と感じる方もおられると思います。
○施設入所になる代表的要因を知る
家族に恵まれ24時間誰かが世話をしてくれる環境にお住いの方は稀だと思います。一人暮らしか、夫婦共々高齢か、若い世代と同居していても日中は一人で過ごす高齢者がほとんどかもしれません。
(1)認知症が進み、体調を維持するのに不可欠なお薬を自己管理できない場合(飲み忘れ、過量服用、頻回の紛失、インスリンなど自己注射が必要な薬剤をきちんと自力で管理できない場合など)
(2)足腰が衰え自力でトイレへ行けなくなった場合
(3)その他、自力で痰がらみを出せず吸引を必要とする方、排尿の管を留置している方などで、継続的医療ケアを要する場合など
これらのケースでは家族による支援が期待できなければ、自宅生活は限界となってしまいます。
○施設入所を回避する工夫
(1)認知症の進行を抑える
永年の喫煙歴、高血圧、糖尿病、コレステロール高値があると進みやすくなります。若いうちからこれらを改善しておくことは重要です。また自宅に引きこもりがちになると脳を賦活化できる機会が減ってしまいます。町のいきいきサロンやデイサービス、通所リハビリなどを活用し、毎週必ず多くの人と接する時間を取り入れ、賦活化するしかけを毎日の生活に取り入れましょう。
(2)足腰の衰えを防ぐ
自宅に引きこもらない生活スタイルがそのまま足腰を使う機会を増やすことにつながります。歩行器で広い廊下を歩くためにデイサービスを利用する方もおられますし、毎週金曜日の通所リハビリテーションの利用もさらに効果的です。しっかりしたリハビリがあるのは天塩町の強みです。活用しましょう。
(1)(2)ともにサービス利用は福祉課が相談窓口になります。
○施設入所を避けられない場合
少しずつ施設利用をする機会を増やしていきましょう。どうしても気が進まない場合も、いずれ現実問題として施設利用なしには立ち行かなくなります。ご家族の皆さんにも、ご本人がデイサービス、ショートステイの利用から始められるよう支援・励ましを是非お願い致します。子供たちも社会に出る前、幼少期から集団生活を少しずつ習得していくのとどこか似ています。抵抗を感じていたことも慣れてしまえばどうってことない、長い人生を歩んでこられた方々は、そんな人生経験も豊かな方ばかりですよね。
(文責 医師 橋本伸之)
お問い合せ先:天塩町立国民健康保険病院
【電話】2-1058
<この記事についてアンケートにご協力ください。>