■10月から開始される新型コロナワクチンの接種について
・富良野医師会 角谷(かくや) 不二雄さん
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の8月19日から25日までの定点あたりの感染者数は、北海道全体では11.40人と6週連続で増加し「注意報レベル」となり、富良野も16.67人でした。感染者数は2023年5月8日に「5類」に移行したことに伴い「全数把握」ではなくなり、実際はこの7~10倍以上になると推定されます。残念ながらCOVID-19の流行は依然として続いており、冬に向けて勢いを増す可能性もあります。
COVID-19が「かぜ」と同じようなものと考えている方は増えていると思います。確かに季節性インフルエンザとの重症化率や致死率の比較をみると、2021年までは6-10倍程度の差があり非常に危険でした。しかし2022年のオミクロン株の流行からその差は縮小し、2022年後半にはほぼ同等になっています。ただし、季節性インフルエンザは80歳以上の致死率1.73%と危険な病気であり、COVID-19も80歳以上では同様です。また、COVID-19には多くの方で長引く症状(いわゆる後遺症)があることがわかってきました。厚生労働省の研究班の札幌市における調査では感染後3カ月で20.9%、6カ月で8.5%、12カ月で5.7%、18カ月で5.3%にのぼりました。海外の小児における調査でも3カ月で16.2%と少なくありません。
日本で流行している新型コロナウイルスは2022年以降ずっとオミクロン株です。しかしオミクロン株の亜系統への変異スピードの速さは驚異的です。現在流行中のオミクロン株KP.3亜系統のウイルス学的特性をみると、従来株よりも高い感染力を示しています。また、免疫逃避性が高く、過去の感染やワクチン接種既往は役に立たないかもしれません。昨年秋からのオミクロン株XBB.1.5亜系統対応1価ワクチンにより誘導された免疫や過去の感染も、重症化の予防はある程度期待できますが、感染防止という点ではもうあてにならないでしょう。
厚生労働省は5月29日に、2024年度秋からの定期接種で使用するワクチンの抗原構成について、JN.1亜系統を使用することを決定しました。KP.3亜系統はJN.1亜系統から派生しています。このワクチンは実験上、KP.3亜系統に効果があるという結果が得られています。おそらく接種により有効な感染予防効果を期待できるでしょう。定期接種は、65歳以上の高齢者と、重い基礎疾患を持つ60~64歳の人が対象で、少ない自己負担ですみます。しかし対象外の人は、原則全額自己負担となります。そして、その額は決して安くはないものになりそうです。「任意接種」に関してはコスト・ベネフィットをどう解釈するかは難しいと思います。しかし、自分のためそして周囲のためを考えて、できるかぎり多くの方に接種していただきたいとお願いします。
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