チセ(家)
アイヌ語で家はチセと言います。チセのチではなくセの部分を高く発音します。日本語の中では、萱(かや)などで葺(ふ)かれたアイヌ民族の伝統的な家のみをチセと呼ぶ人が多いですが、材料や構造がどのようなものであっても、アイヌ語で家はチセです。
ところで、北海道の歴史をさかのぼると、「アイヌ文化期」という時代がありますが、さらにその前には縄文文化、続縄文文化。擦文文化など様々な文化の時代があります。5~10世紀に道北・道東の沿岸部に広がっていたオホーツク文化のように、サハリンからやってきた人たちとその子孫が担い手だと考えられている文化もありますが、北海道の大部分では人が入れ替わることなく、縄文文化を担った人たちの子孫が続縄文文化や擦文文化の主な担い手となって、いまのアイヌ民族につながっています。
アイヌ民族の家も、和人(日本人の大多数を占める民族)の家と同じく、時代によって変わってきました。例えば、擦文時代には竪穴式でかまどがある家が普通でしたが、「アイヌ文化期」には地上に家を建てる平地式で、囲炉裏
のある家に変わっていきました。また、この時代になると、鉄製品や漆器がたくさん入ってくるようになったことで、土器が使われなくなり、現在知られている伝統的なアイヌ文化に近いものがたくさん出てくるようになりました。そのため、考古学ではこの時期を「アイヌ文化期」と呼んできましたが。アイヌ民族がこの時期に急に現れたのではありません。そこに暮らしている人たちはずっと連続しているのです。
文:阪口諒(さかぐちりょう)
問合せ:生涯学習課 学芸員
【電話】(幕)54-2006
<この記事についてアンケートにご協力ください。>