~イザベラ・バードの道を辿る and IWOR アイヌ文化体験ツアー~
■アドベンチャートラベル(AT)とアドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)
ATは、一般的に『アクティビティ』『自然』『異文化体験』の3つの要素のうち、2つ以上を組み合わせたもので、アクティビティを通じて自然体験や異文化体験を行い、地域の人々と双方向で触れ合い楽しみながら、その土地の自然と文化をより深く知ることで、自分の内面が変わっていくような旅行形態をいいます。主にヨーロッパや北米、オーストラリアを中心とした富裕層に人気が高まっています。
ATWSは、ATに関わる世界中の観光関係者が一堂に会する国際サミットです。米国のアドベンチャートラベル・トレード協会が2005年から毎年開催されており、アジア初の開催は日本の北海道で23年9月11~14日に実施され、日本を含む64カ国・地域から約750人が参加しました。
道内ではサミットの開催前後に「プレサミット」や「ポストサミット」といった各種ツアーを実施し、平取町でもツアーが行われ、オーストラリアやカナダ、ドイツなどから11人が参加しました。
■イザベラ・バードってだれ??
イザベラ・バード(1831-1904)はイギリス出身の女性旅行家で、世界的に有名な紀行作家です。車のない時代に世界各地を馬や徒歩で旅を続け、北海道では函館から室蘭経由で白老、平取などの集落を訪れ、当時の首長であったペンリウクの家に滞在しています。
その旅行記である『日本奥地紀行』は、当時の記録が詳細に記されており、近代初頭のアイヌ文化研究において広く活用され、『二風谷イタ』、『二風谷アットッㇱ』が伝統的工芸品に指定されるための文献の一つともなりました。
バードが辿ったとされる沙流川流域の日高町富川から平取町本町(義経神社)まで約15kmのフットパスコースを実際に歩き、ガイドの解説に耳を傾けながら、バードが見た景色を感じることができました。
■IWORアイヌ文化体験??
アイヌの自然観と文化の継承を体感していただくため、特別に小平地区の奥にあるアベツ川流域の国有林で、IWOR(イウォㇿ)アイヌ文化体験を行いました。
IWOR(イウォㇿ)とは、かつてのアイヌの人たちが衣食住に必要な自然素材を採取する森林・河川空間を表し、アイヌ語で「狩場」を意味します。沙流川流域ではコタンごとにイウォㇿがあったと言われています。
森に入る前のカムイ(神)への挨拶からはじまり、狩猟に出たときに泊まるためのクチャチセ(仮小屋)の中に入ってもらい、独り森の中で泊まる気持ちを味わってもらいました。次にアベツ川を渡り、アイヌ文化に使用する草木の説明を行いながら森の奥へと進みます。途中、伝統的狩猟の模擬体験として仕掛け弓やクマ・シカを模った的に向かい、弓を射る弓矢体験を行いました。続いて昔ながらの森に再生する取り組みの紹介として、伝統的工芸品である『二風谷アットゥㇱ』の原材料のオヒョウや『二風谷イタ』の原材料のクルミなどの樹木のほか、伝統料理に使用する山菜が鹿の食害を受けないで生育している現地を見ながら解説を行いました。
■アドベンチャートラベルによる今後の展望
世界では一般的に行われているアドベンチャートラベルは、まだまだ日本では認知度が低いですが、北海道で行われたサミットをきっかけに、多くの外国人観光客が日本に訪れるようになると思われます。
外国人観光客のアイヌ文化への注目度は高く、このようなツアーの需要は高まってくると考えられます。
平取町ではアイヌ文化に限らず、町の食や観光などに関心を持ってもらえるよう世界に情報発信していくことが重要となります。
・スタート地点から沙流川堤防に上がり、沙流川大橋を背に歩きます。
・当時は紫雲古津川向大橋が架かっていなかったため、丸木舟で対岸まで渡りました。
・フットパスコースの終点地である義経神社鳥居前です。バードが滞在していたペンリウク宅はこの近くにありました。
・「エキㇺネ クワ」(山の杖)を持ちながら川を渡り歩き、森の奥へと向かいました。
・トドマツの枝で作られている「クチャチセ」(仮小屋)。
・シカの模型に向かって弓を射る体験。
※詳しくは本紙をご覧ください
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