◆傷んだ土を復元する草刈事業・土と水の健康は地域経済の基盤
岩見沢農業高等学校農業土木工学科の佐々木章晴と申します。教員となって30年近くになり、農林業と食品加工は一通り経験してしまいました。平成14年ごろから中標津農業高等学校の生徒たちと一緒になって行った研究を今もずっと続けています。この研究で、陸で行ったこと、河川を通して、海に影響している、この地方で言いますと、林業や酪農で行ったことが、河川を通して、水産業に影響しているということが、おぼろげながら見えてきました。そのようなご縁があり、今、この原稿を書かせていただいております。
今現在、燃料も肥料も濃厚飼料も高騰しているのに、生乳の価格はあまり上がらず、また、漁獲量も思うように伸びず、陸も浜も地域経済全体が苦しい思いをしています。これはごく簡単に誤解を恐れずに申し上げますと、土を傷めて土の目詰まりを起こしたことによって、川の水の質がすっかり変わり、結果として牧草やデントコーンが思ったほど取れず、サケの稚魚などが沿岸でうまく育たない、といったことにつながってきます。
生乳の生産量を増やすためには、肥料や濃厚飼料をたくさん使うことが大切でした。
しかし、その陰で土が傷み空気や水の通りが悪くなってしまいました。結果として、雪解け直後や大雨のときに、草地にも水たまりが見られるようになりました。
損益分岐を考えながら、肥料や濃厚飼料の使用量を調節していくことが大事になりますが、傷んだ土で急に肥料やスラリーを減らすと、びっくりするほど牧草が取れなくなります。肥料や濃厚飼料を減らしていくにしても、傷んだ土を手当てしていくことが、必要になります。
その手当ての一つが、草地の周りのヤブに風が通る道をつくる「草刈事業」になります。風の通り道を作ってあげるだけで、びっくりするほど土の中の空気や水の通りが良くなります。こうすることで土が生き返り、多少肥料や濃厚飼料を減らしても、それほど生乳生産量が減らなくなります。また、結果として川の水の質も良くなり、サケの稚魚などが育ちやすくなります。
今回の実験的な草刈事業がうまくいきましたなら、ぜひ、標津川流域すべてで行えるよう、微力ながら力を尽くしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
◆佐々木教諭ご来歴
佐々木 章晴(環境学博士)
【所属】
岩見沢農業高等学校農業土木科 教諭
北海道大学農学研究院土壌学研究室 客員研究員
【経歴】
平成8年3月 帯広畜産大学卒業
平成8年4月~平成12年3月 北海道富良野農業高等学校 教諭
平成12年4月~平成19年3月 北海道中標津農業高等学校 教諭
平成19年4月~平成29年3月 北海道当別高等学校 教諭
平成28年2月~現在 須藤畜産技術士事務所 技術士補
平成29年4月~現在 北海道岩見沢農業高等学校 教諭
平成29年10月~現在 北海道大学農学研究院土壌学研究室 客員研究員
水産課水産担当
【電話】85-7245
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