■~賃貸住宅を退去する時のトラブル回避術「原状回復」について~の巻
髙安ユミ子消費生活相談員
実家を離れて初めて一人暮らしをする方や住み慣れた土地から転勤などで賃貸住宅に入居される方が多くなる時期になりました。
全国の消費生活センター等の相談窓口には毎年3万件以上賃貸住宅の相談が寄せられ、特に2月から4月にかけて相談が多くなります。また、相談内容の約4割が「原状回復」の関係であると報告されています。今回は賃貸住宅契約の注意点や原状回復についてお知らせします。
Q:原状回復について詳しく教えてください
A:賃貸借終了により退去するとき、借主は故意・過失によって生じたキズや汚れなどの補修費用を一定の範囲で負担しなければなりません。しかし、借主の通常の使用による通常損耗や経年劣化は貸主の負担となりますので入居時の状態に戻すということではありません。ただし、特約事項に合意した場合はその特約に従うことになります。また、賃貸借契約は諾成契約といって、貸主と借主が口頭で合意するだけで成立するため契約書面がなくても賃貸借契約は成立します。契約の実務では合意した内容を明らかにしておくため詳細な契約書が作成されますので、しっかりと内容を確認することが必要です。
「国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」
◆豆知識
〈契約に関する基礎用語〉
・家賃→部屋を借りる際の賃借料。家賃には消費税はかかりません(民法601条)。
・共益費→集合住宅の共有部分の維持管理費。
・敷金→契約時に貸主に対して担保として預けるお金(保証金)のことで、家賃の不払いや破損した備品の修繕費用に充てられます。
◇貸主と借主の負担区分の例
〇窓
地震で破損したガラス=貸主負担
〇壁(クロス)
・クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)=貸主負担
・画びょう、ピン等の穴=貸主負担
・たばこ等のヤニ・臭い=借主負担
・釘穴、ねじ穴(下地ボードの張り替えが必要な程度のもの)=借主負担
〇台所
ガスこんろ置き場、換気扇等の油汚れ(手入れ不足等によるもの)=借主負担
〇床(フローリング)
・家具の設置による床のへこみ=貸主負担
・引っ越し作業で生じた引っかき傷=借主負担
〇建具(柱など)
ペットによる傷・臭い=借主負担
〇水回り台所
風呂、トイレ、洗面台の水あか、カビ等(手入れ不足等によるもの)=借主負担
出典:国民生活センター発行くらしの豆知識2023(特集1賢く始める!新成人より引用)
◆相談員からのアドバイス
・契約する前に、契約内容の説明を受け、十分理解した上で契約しましょう。
・入居するときは、家具を搬入する前に部屋の状態を写真やメモなどに記録しましょう。
・入居中に備品などが破損した場合は放置せずに貸主に連絡しましょう。
・退去時の精算内容に納得できない場合は貸主に説明を求めましょう。
▽国民生活センターでは消費者トラブルについての情報提供や相談窓口等を案内するため「消費者トラブルFAQサイト」を開設しています
このサイトは消費者トラブルに遭われた方が、時間や場所を問わず、まずはご自身で解決方法を調べて解決を図ることができるように、FAQ(よくある質問)形式でトラブル解決を支援する情報や相談窓口を提供するサイトです。自己解決が期待できるトラブル例を掲載していますので、消費生活相談の一つの方法として活用ください。
知りたい項目がない場合やご自身では解決困難である場合は、消費生活相談所までお問い合わせください。
詳細:
・消費生活相談所
【電話】28-0585
(南6-2 町社会福祉協議会内)
平日 午前10時〜午後3時30分
・役場住民課住民生活担当
【電話】28-3858
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