■タンチョウにもワクチン接種を!
皆さんは、これまでコロナワクチン接種を何回受けられましたか?私の接種券では5回(昨年末時点)となっていて、あと1回、今年(令和6年)の3月末までに無料で接種を受けられます。
病気を起こし、場合により死を招くウイルスに対し、ワクチン接種という強力な武器で対抗する知恵をヒトは身につけ、そのおかげで、私も91年と10か月、生きながらえてきました。でも、鳥がかかるインフルエンザ、いわゆる鳥フルに対し、ヒトはまだ有効な対抗策(たいこうさく)を持っていません。もちろん、ワクチンを作るのは可能でしょうが、野生の鳥や1か所に何万といるニワトリ1羽1羽に、経費(けいひ)的に見合う形で、どうやってワクチンを注射するのでしょう?
さて、タンチョウが高病原性(こうびょうげんせい)鳥フルに感染して死亡した例が、令和4年に初めて北海道で起きました。場所は道東の釧路市音別(おんべつ)町の川で、親離れ前の幼鳥メスです。本来はオス幼鳥も含む4羽家族でしたが、兄か弟かわかりませんがオス幼鳥は早くに亡くなったらしく、親の消息もつかめていません。
しかし、北海道に定住するカラス、渡り鳥のカモ類・ハクチョウ、猛禽類(もうきんるい)のハヤブサ・オジロワシなどで、鳥フルによる死亡は10年ほど前から起きています。それでも、鳥フルで保護されたハクチョウのいた越冬地で、一緒に暮らすタンチョウがなんともなかった例もあります。つまり、同じウイルスの働きに影響を受けやすい、いわば感受性(かんじゅせい)の強い種や個体もいれば、影響を受けにくい種や個体もいるのです。
さらに、ウイルスは形や働きがよく変わり、さほど害のない低病原性(ていびょうげんせい)から、害を強く与える高病原性へ変身することもよくおきます。こうしたことが重なり、令和5年はすでに道東の別海(べっかい)町(2羽)・標津(しべつ)町・標茶(しべちゃ)町・幕別(まくべつ)町で、タンチョウが計5羽死にました。しかし、この数は、たまたまヒトが見つけた羽数です。
長沼町のまわりでは、札幌市や美唄(びばい)市・むかわ町で、カラス・ハクチョウが鳥フルで今秋死んでいます。ただ、道央のタンチョウは、今は主に日高で越冬しています。イスラエルでのクロヅル8,000羽とか、九州の出水(いずみ)市のナベヅルなど1,500羽死亡などは、塒(ねぐら)が沼や水田といった水の流れにくい環境のため、糞便(ふんべん)に含まれるウイルスも高濃度に溜まりやすいことが一因(いちいん)のようです。しかし、日高では川が塒なので、糞便も流されやすく、感染も起きにくいとは思います。が、油断はなりません(写真)。
来月には、タンチョウもまた舞鶴遊水地へ戻って来るでしょう。その時、鳥フルにかからないよう、ワクチン接種券に見合うものを発行できないか、今から皆で考えておきましょう。
(文・写真:正富宏之)
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