◆自然の消費者であること
然別湖では、平成18年から然別湖ネイチャーセンターや鹿追町の担当部署が、小学生や高校生を対象にウチダザリガニの捕獲体験を通じた自然体験学習を行っています。実際にウチダザリガニを捕獲し、食べてみることで、楽しみながらも今起きていることに向き合ってもらうきっかけとなっています。
ウチダザリガニの捕獲を体験した人が驚くのがその繁殖力です。ウチダザリガニは1匹の個体から100個から500個程度の卵を産みます。全滅は遠い道のりですが、捕獲の回数を増やし捕獲圧を大きくすることで、ウチダザリガニの数を減らし、水草の復活や魚たちの住処を回復することが1つの目標となっています。
ニホンザリガニとミヤベイワナが多くいた頃の元の然別湖の姿を取り戻す。これが松本さんの取り組みの最終的な目標です。実は、然別湖に当たり前のようにいるニジマスやサクラマスも元は外来種。昭和初期、観光開発がはじまった然別湖は「おおきなオショロコマが釣れる湖」として釣り人憧れの場所となっていました。釣り人の増加にともない、ミヤベイワナの減少を感じた当時の人々は、同じサケ科のニジマスやサクラマスを放流して資源を確保しようとしました。当時は外来種問題の理解が進んでいませんでした。
今現在、目に見えて問題が起きていないのだからニジマスやサクラマスがいても困らないのでは?と思う方もいるかもしれません。しかし、数万年もの間、安定した生活により独自の進化をしてきたミヤベイワナにとって、ニジマスやサクラマスの侵入はとても大きな影響を及ぼすのです。人間の手によって本来の自然環境が崩れてしまうような出来事は、身近なところでも起きています。
ナキウサギの問題も同様です。
ナキウサギは「ロープなんか関係ないやい!」と人間の決めたラインをぴょんと飛び越えて、一生懸命にエサを集めています。彼らの住処の場所を定めてしまう。これもまた人間が決めることではないものの一つなのです。
人間は目的があるとその道中のものはついつい見えなくなるもの。ガレ場に向かう登山道で人をよけるときについ踏みつけてしまったその草木たちも、その山で暮らす立派な仲間たちということを忘れなければ、意識は変わるのかも知れません。
好きな景色・食べ物・動物…人は自分にとって大切な物が多いほど、それを守りたいと思う気持ちが強くなります。大きすぎて他人事になりがちな環境破壊の問題も、「足元の自然に目を向けよう」そんなたった少しの心掛けから改善に向かっていくのではないでしょうか。
◆わたしの「好き」を増やす
町外から来た人に鹿追を紹介して、喜んでもらえると自分も嬉しくなる。また、自分の好きな景色が広まっていく。そんな気持ちの積み重ねが、まさに鹿追町の目指す未来の根底にあるもの。「この景色が好きだからみんなで守っているんだ」という自分たちの活動ごと、「鹿追の景色」として広まることが、私たちのできる重要な活動の一つと言えます。
まずは、然別湖に遊びに行きませんか?お弁当を持って湖畔でピクニックなんてどうでしょう。登山だって登頂を目指さなくても、道中聞こえる鳥のさえずりや草木に目を向けてお散歩して帰るのもきっと楽しいはず。空から零れんばかりの星を見にいくのも素敵です。わたしたちの好きな景色、たくさん増やしていきましょう。
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