■田舎のもつ価値とは
いすみ市長 太田洋
私は毎朝、数社の新聞に目を通していますが、それぞれの新聞のコラム欄は必ず読むようにしています。多くの記者が思い思いの言葉で書く文章は大変興味深く、何気ない文章の中に記者の思いを強く感じることが多くあります。6月のある新聞のコラム欄は、房総地域へ赴任してきた記者の記事でした。内容は都会の地から房総の東南部に赴任した時の感想で、海岸地域のイメージを持って赴任してきたものの、実際に来てみると「山ばかり」との感想が記されていて、それでも整備されている箇所を見て、住民が担い手となって支えている暮らしを改めて知ったとも書いてありました。記事を読みながら、海だけでなく、是非、房総の緑の豊かさも堪能してもらいたいと思いました。
緑多いこの地で生まれ育ち、ふるさととして力強く生きている人々は、日々淡々と暮らしています。ここにはお金には代えられないものがあります。他にはない自然、豊かな田園風景、親から受け継いだふるさとがあります。私たちは、ここに住むことに責任と役割をもっていると自負しています。
夏が近づくにつれ、ここに住む人々は草との闘いが始まります。この地に住む人は草刈りも地域に暮らすための大切なことと考えています。地域の草刈りなどはコミュニケーションのひとつであると同時に、必要なコストです。
ここ数年、コロナで社会の風景は変わってしまいました。地域のつながりは希薄になり、孤立する人も増えてきました。町内会も少しずつ、助け合い、支え合いが希薄になりつつありますが、災害が懸念される中、今一度地域のつながりを地域から再生させることが大切と考えます。
都市の発展は経済の牽引役として大切なことは事実です。しかし田舎は与えられた地域を守りつつ、農地を耕し、草を刈り、国民の食を満たす大切な役割を持っています。国はかかるコストを国全体で負担するようなことを考えてほしいと思います。何よりも緑の田園、畑を守り、日本の原風景を守り続けている人々の生活をどうしたら守れるか、国全体で考えてもらいたいものです。
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