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歴史資料館 連載三八六

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千葉県鋸南町

■鋸山の成り立ち
鋸山(のこぎりやま)は、その名のとおり、ノコギリのような山の稜線(りょうせん)を持つ独特な姿をしています。そして山全体が凝灰質砂岩(ぎょうかいしつさがん)でできた岩石の山です。なぜこのような山ができたのか、お話していきましょう。
鋸山の誕生は、まだ日本列島が大部分海の底だった太古の昔、地殻変動(ちかくへんどう)により形作られていきます。日本列島は大陸プレートと海からのプレートの境界に位置し、絶えず押されています。およそ600万年前、海底に積もった火山灰や泥などの地形が、両側から強く押されて波打ち状になります。この地殻変動を褶曲(しゅうきょく)と言います。強い圧力により緻密(ちみつ)な凝灰岩、凝灰質砂岩が形成されます。
これが長い年月をかけて海底から隆起していき、陸地を形成していくのです。房総半島の地形は、まさに海から押されて形作られてきたもので、これが房総丘陵(ぼうそうきゅうりょう)というわけです。その中でも鋸山は特異な存在です。
褶曲の軸、つまり波打ちの中心点には二通りあります。圧力により山形になる中心を背斜軸(はいしゃくじく)、谷型になる中心を向斜軸(こうしゃくじく)と言います。鋸山は、実は向斜軸を頂点とする山なのです。
地上にせりあがったこの背斜の褶曲地形が、長い年月をかけて風雨などにより柔らかい両側の泥部や土砂が流され、中心の固い凝灰質砂岩が露出します。こうして屹立(きつりつ)した岩石の山・鋸山が誕生したのです。現在でも鋸山の先端付近では斜(なな)めの地層を見ることができます。
鋸山の凝灰質砂岩は、頂上付近が一番上質の石となります。加工がしやすく、耐火性に優れ、のちに房州石(ぼうしゅういし)、金谷石(かなやいし)と呼ばれ、石切産業を興し、地域にうるおいをもたらすことになる鋸山。まさに大地の生み出した恩恵(おんけい)を秘めた天空の岩山です。

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