■HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)の話
塩田記念病院 名誉院長 婦人科部長 遠藤信夫
子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが性交渉により子宮頸部(子宮の腟側)に持続感染することが原因で発生するということがわかっているがんです。早期に発見すれば比較的治療しやすく予後の良いがんではありますが、初期には自覚症状に乏しく進行してしまうと予後が悪く、死亡に至らないまでも女性から妊娠・出産の機会を奪います。
一方で子宮頸がんはHPVに感染していない初交前の女児へのHPVワクチン接種でその発生を著しく低下させることが出来ます。このワクチンは日本でも2013年から定期接種となり、ある年齢では無料で受けられますが、一時、安全性に対する不安から厚生労働省が積極的接種の勧奨を中止したため接種率が極端に低下してしまいました。
しかし、この問題は国内での大規模疫学的調査で問題無いと結論付けられています。世界的には大多数の国で接種が行われた為、子宮頸がんの発生が劇的に減少していることや因果関係の証明された副作用は無いという事実から日本でも2022年4月から積極的接種の勧奨が再開されました。
また、以前に使用された2価、4価のワクチンに比べ、より広範囲のHPVに効果を発揮する9価ワクチンも承認されています。無料接種を受けるには対象年齢等の制約がありますが積極的接種の勧奨中止による差し控えで定期接種の機会を逃した年齢の女性にも公費負担の受けられる「キャッチアップ接種」制度もありますのでご相談下さい。子宮頸がん予防のためにワクチン接種は極めて有効な手段ですので積極的接種をお勧め致します。
問合せ:医療法人塩田記念病院
【電話】35-0099
<この記事についてアンケートにご協力ください。>