◆鼠経(そけい)ヘルニアについて
塩田記念病院 外科 医師 塩田 美桜
ヘルニアとは体の組織が正しい位置からはみ出した状態を言います。鼠径ヘルニアは脚の付け根(鼠径部)の筋膜が弱くなり筋肉の隙間から本来は腹腔内にあるはずの腹膜や大腸・小腸などが腹腔外に飛び出してしまった状態です。俗に脱腸とも呼ばれています。小児の場合は先天的なものですが、成人の場合は立ったり座ったりという慢性的な圧力に加え、加齢に伴う腹壁の脆弱化が原因と言われています。
初期症状は立った時や腹部に力を入れた時の鼠径部の膨らみです。通常は横になったり押すと元に戻ります。他に、鼠径部のつっぱり感や便秘などが起こることもあります。放置しておくと飛び出した腸管が周囲の筋肉で締め付けられてしまい押しても戻らなくなってしまいます。この状態を嵌頓といいます。嵌頓状態になると腸が狭窄して、血流が途絶えるため、痛み、嘔吐など腸閉塞の症状が出現します。また腸管の壊死や敗血症をきたし緊急手術が必要となる場合もあります。
鼠径ヘルニアは自然治癒が期待できないため、治療は手術が原則です。弱くなった筋肉の隙間を人工のメッシュで内側から塞ぐ手術をします。手術を行うと見た目が元通りになり、嵌頓を予防することができます。手術には鼠径部を4〜5cm切開する鼠径部切開法と小さな傷で行う腹腔鏡手術があります。当院では腹腔鏡手術も積極的に取り入れています。上記の症状で気になることがあればぜひご相談ください。
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