■vol.211 下総名勝図絵(しもうさめいしょうずえ)にみる眺望
香取市域の江戸時代の様子を伝える地誌に「下総名勝図絵」があります。松沢村(旭市清和乙)の名主を務めた国学者である宮負定雄(みやおいやすお)が天保14(1843)年から嘉永6(1853)年にかけて千葉県北部を旅行して訪れた寺社や町の眺望、伝承をまとめたものです。書中の絵図には詳細な書き込みがされているため、本書は現存しない建物や石碑を記録した貴重な資料として知られています。
香取市域では、香取神宮の桜の馬場、佐原の諏訪神社と石尊山、大戸神社、大倉の側高(そばたか)神社、阿玉川の仙元(せんげん)山、小見川の小見山・浅見(せんげん)山などの高台からの茨城県方面への眺望が多く紹介されています。それぞれの絵図には手前に展望台となる山と当時の眼下の家並みが書き込まれ、奥には鹿嶋市・潮来市方面の台地や湖沼、筑波山などの遠景が描かれています。
このうち阿玉川の仙元(せんげん)山は阿玉川地区の小字仙間に接した山ですが、現在は一部が掘削されたため宮負が眺望を記録した地点は立ち入ることができません。小見川の小見山・浅見山は、現在は城山(じょうやま)と呼ばれています。山裾の分郷地区に浅間下の小字があり、江戸時代の呼び名の名残です。
宮負は香取神宮の桜の馬場からの十六島方面への眺望を「景色最佳し」と称しています。現在では桜と紅葉の名所として知られる場所からの眺望で、手前には津宮地区の家並み、奥には水郷一帯に帆船が行き交う様が描かれています。
「下総名勝図絵」は、元は手書きの個人の記録で、限られた人しか見ることができない資料でしたが、現在では刊本となり図書館で閲覧できます。
問合せ:生涯学習課
【電話】50-1224
<この記事についてアンケートにご協力ください。>