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わたしのまちの文化財 vol.200 雛(ひな)の勝手道具

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和歌山県紀の川市

令和5年6月頃、紀の川市在住の人から大正時代の雛(ひな)道具を寄贈いただきました。雛道具と聞いてパッと思い浮かべるのは雛飾りですが、今回いただいたものは、雛人形を彩る雛道具と勝手(台所)道具です。
3月3日の雛祭りは、別名「桃の節句」と呼ばれます。罪や穢(けが)れを人形(ひとかた)に託して水に流した古代の風習や平安貴族の子どもたちが行った「ひいな遊び」などが雛祭りに発展したと考えられています。江戸時代に入ると、女の子のために、おひなさまを飾る行事が全国的に定着しました。
貴族の結婚式をイメージした雛飾りには、嫁入り道具である雛道具が附属するものがあります。黒漆塗り金蒔絵(きんまきえ)と絢爛(けんらん)豪華なもので、かつては江戸で好まれました。それとは対照的に、京阪地方(関西)では身近な台所の様子をそのまま映した白木の勝手道具が好まれ、雛飾りに用いられました。勝手道具は、車井戸、かまど、流し場などの区画に分けられ、台所で使用する包丁、まな板、樽(たる)、桶(おけ)、かつお節削り器、焼き網などが小さく作られています。すぐにでもままごと遊びを始めたくなるほど丁寧に作られ、女の子たちは、ハレの日のままごと遊びを通じて、家事や礼儀を身につけました。そんな勝手道具は、昭和30年頃まで京阪地方の桃の節句を賑やかに彩りましたが、量産される日常のままごと道具にとってかわり、今では雛飾りの中から姿を消しています。
5月5日の「こどもの日」は、「端午の節句」(別名菖蒲(しょうぶ)の節句)とも呼ばれる年中行事が行われる日です。端午の節句では、数十日前から男の子の成長を願って、武者のぼり、もしくは鯉のぼりをたてて、屋内には武者人形を飾り、厄払いの力があるとされる粽(ちまき)を作り、供えます。また、菖蒲の節句と言われるとおり、邪気を払う霊草とされる菖蒲を蓬(よもぎ)と合わせ、これを軒端にさして邪気を払い、悪病を除くまじないとしたり、牛の頭に巻いたり、菖蒲で牛を洗う地域もあります。今でも、菖蒲の根を酒につけた菖蒲酒や風呂の湯に入れて菖蒲湯として厄を祓う風習が残っています。
日本には数多くの年中行事があり、時代とともに徐々に変化しています。「桃の節句」や「端午の節句」は現在でも大事な行事の一つですが、子どもの成長を願う気持ちとともに、こうした身近な行事の中にある歴史も大切にしていきたいものです。

■文化財サポーターを募集
文化財サポーターは、市内の文化財の説明や歴史体験イベントなどを市と協働で行っています。興味のある人は、サポーターとして活動してみませんか。

問い合わせ:文化財サポーターの会会長 今田
【電話】75-4047

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問合せ:紀の川市文化財保護審議会
【電話】77-2511(生涯学習課内)

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