9月21日は世界アルツハイマーデーと定められており、世界中で認知症への理解を深める取り組みが行われています。誰もが住み慣れた地域で自分らしく生き生きと暮らしていくために、私たち一人ひとりにできることを考えてみましょう。
■認知症ってどんな病気?
認知症は、認知機能が低下し、日常生活に支障をきたした状態を言います。症状や進行の速さは人によって異なり、さまざまです。
超高齢社会となった現在、認知症は特別な病気ではなく、誰もがなりうる身近な病気です。
認知症ご本人の中村ふみさんと、認知症のご家族の介護を経験された北条ふとしさんにお話を伺いました。
◇中村ふみさん
Profile:義母、母、夫、3人の認知症の介護を経験し、ご自身も認知症に。現在は埼玉県オレンジ大使※として精力的に活動中。
※認知症ご本人による普及啓発を行うため、県が任命した大使。
1.認知症のご家族の介護について
つらいこともあったけれど、楽しい日々でした。元々、7人兄弟の長女としての肝っ玉な性格であり、介護者の集いに参加して仲間を作ることもできたため、何とか乗り切ることができました。
2.介護の経験から学んだこと
当時は、介護者同士で愚痴を言い合うことの重要性を感じていました。現在も近所のかたたちと定期的に集まっています。話す相手がいることは大切。介護は気持ちが滅入ることが一番良くないので、認知症になってからはできるだけ自分のクヨクヨした姿を介護者には見せないようにしています。家族からは、「元気で良いね」と言ってもらえています。
3.自分が認知症だと知ったときの気持ち
「ようやく自分自身も当事者の気持ちや立場が分かるようになった」と嬉しかったです。自分が認知症になって、当事者の気持ちがわかるようになり、介護した家族にはもっと優しくしておけばよかったと思うようになりました。
4.現在の生活での工夫や周りの人に求めること
優しく声掛けをしてもらえるとありがたいですが、自分自身の体調もその時々で違うため、どう接してほしいか言葉にして伝えることは難しいです。ただ、心掛けていることとして、やってもらいたいことや感謝は自分から伝えるようにしています。「いただきます」「ごちそうさま」「ありがとう」を相手に伝えることが大切。介護者や周りの人に腹が立ってしまうこともありますが、相手を傷つけるような言葉は使わないようにしています。家族や介護者と良い距離感を持ち、言いたいことを言い合える関係が築けるといいと思います。
5.埼玉県オレンジ大使としての活動について
認知症の人しかなれないことを思うと、光栄だと感じています。大使としての仕事があるおかげでクヨクヨせずに、自分自身も楽しみながら活動することができています。
◇北条ふとしさん
Profile:吉本興業所属。埼玉県住みます芸人として活動するほか、マツコ・デラックスのそっくりさんとして市内のイベントに多数出演。両親の介護を機に介護の世界に携わり、認知症介助士、レクリエーション介護士2級などの資格を取得し、講演会など多方面で活躍中。
1.お母様が認知症かもしれないと気が付いたきっかけ
認知症になる1年ほど前にガンが発覚した母は、コロナ禍だったこともあり家族と接する機会が減っていました。そんな中で、母の友達から「最近お母さんの様子がおかしいから、ちょっと見てあげて」と連絡があり、病院で検査を受けたところ、認知症の可能性があることが分かりました。
2.お母様が認知症だと診断されたときの気持ち
まさかという気持ちで非常にショックでした。当時は認知症に対して、物忘れをしたり、怒りっぽくなったり、徘徊したりというネガティブなイメージしかありませんでした。
3.介護の日々での気持ちの変化
それまで認知症について全く知識がなかったので、さまざまな資料を穴が開くほど調べました。その過程でまず気付いたのは「認知症はとても身近な病気」だということ。ゆくゆくは5人に1人が認知症になる時代が来るかもしれないと知り、風邪と同じくらい誰もがなりうる病気だと感じたんです。そして、少し無理やりではありましたが、気持ちをシフトチェンジし、自分自身を納得させました。
そこからは、母に余生をどのように過ごしてほしいかを徐々に考えるようになっていき、お笑いをやっている僕としては「母に笑っていてほしい」という気持ちが一番でした。母が笑顔でいるためにはどうしたらいいのか、何をしたら喜び、僕自身も楽しめるのか…そこから、母と接する時間がすごく長くなりましたね。
4.認知症のかたへの接し方について
特に音の記憶が残りやすいと聞いたことがあったので、母が好きな昔の歌を流すようにしました。認知症でもリズムは覚えていて、歌詞も大体は覚えているけれど、いつも同じところで間違えてしまう。そんな時、ヒントを出して考えてもらうことを何回か繰り返すうちに、正しい歌詞を思い出せるようになったんです。
認知症になると何もかも忘れてしまうと思われがちですが、必ずしもそうではなく、集中して考えることで思い出せる場合もあると思うんです。でも、無理に考えさせようとすると、お互いに嫌な思いをするので、昔の歌など、本人が好きなものを取り入れて、楽しみながら思い出してもらえるように工夫しました。
5.家族にできること
母の介護を通じて、自分自身の無力さに気が付きました。結局、ただ愛情を持って接することしかできませんでしたが、今思えば、それが一番重要だったと思います。
認知症のかたは、すぐに忘れてしまうだけで、言われていることや周囲の状況は理解しているはずです。家族にできることは、認知症のかたのそのような状態を理解し、愛情を持って接することだと思います。
6.今、介護をしているかたに伝えたいこと
介護をしていると、イライラして怒ってしまって、後ですごく反省するということが、誰にでもあると思います。でも、落ち込まずに次に向けて気持ちを切り替えてほしいと思います。
認知症のかたには、不安な気持ちではなく喜びの部分だけを伝えてあげるようにすればいいんです。
市ホームページにインタビュー全文を掲載しています。
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