■高血圧の診断と治療
◇はじめに
血圧とは動脈内部の圧を指し、血圧が高い状態が高血圧です。頭痛やめまいなどの症状が出ることもありますが、ほとんどの人は自覚症状がなく実感がわきにくいかもしれません。しかし、高血圧は長い時間をかけて血管や心臓に強いストレスをかけ、脳卒中や心筋梗塞(しんきんこうそく)などの重大な病気を起こす危険性を高めます。高血圧治療の目的はこれらの病気が起きないように予防することです。
◇診断
血圧には上の値と下の値があり、「(上の値)/(下の値)mmHg」と表記されます。上の値は心臓が収縮したときの値(収縮期血圧)で、下の値は心臓が拡張したときの値(拡張期血圧)です。
血圧測定には、診察室で測る「診察室血圧」と家庭で測る「家庭血圧」があります。診察室血圧は緊張するなどして高くなる傾向があります。そのため、診察室血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上を高血圧としています。最近では家庭血圧が重視されています。家庭血圧の測定では原則1日2回、朝と晩に測定しましょう。緊張すると血圧は高くなりますので、リラックスして測ることも大切です。
自動血圧計は薬局、家電販売店などで購入できます。いくつか種類があり、上腕に巻くもの、手首に巻くもの、指に巻くものなどがあります。一般的には上腕に巻くものが最も正確とされています。
◇治療
高血圧治療を開始する際、ご自身にあった治療目標値を設定することが重要です。75歳未満は診察室血圧130/80mmHg未満・家庭血圧125/75mmHg未満、75歳以上では診察室血圧140/90mmHg未満・家庭血圧135/85mmHg未満を目指すようにします。ただし、合併する病気によっては目標値が異なる場合もありますので、医師に相談して治療目標値を決めましょう。
高血圧治療は、通常、まず食事療法、運動療法、禁煙などの生活習慣の改善から始めます。
第1のポイントは塩分制限です。高血圧には塩分の摂りすぎが大敵です。高血圧患者の1日の塩分摂取目標は6g未満とされています。塩分の他に、カロリーや脂肪分にも気をつけましょう。特に、肥満や脂質異常症を伴っている場合は注意が必要です。飲酒は適量であれば緊張をほぐすことが期待できます。ただし飲みすぎると血圧を上昇させるので、1日に日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本程度にしましょう。
適度な運動を30分以上、できれば毎日、少なくとも週3回以上行うと効果的です。少し汗ばむくらいのウォーキングをお勧めします。時間の余裕がなければ10分以上の運動を数回行い計30分以上としても結構です。それでも億劫(おっくう)だと思われる方は掃除・洗濯・買い物、あるいはエレベーター・エスカレーターでなく階段を使うなど、まずは日常生活のなかで運動量を増やしてみましょう。
禁煙は大切です。やめるという意思を強くもって下さい。医師の指導とともに禁煙を助ける禁煙補助剤を使う方法もあります。ストレスもよくありません。上手に気分転換を図りましょう。また急に寒いところに出る、熱いお風呂に入る、重い物を急に持ち上げる、排便時にいきむなどの行動は血圧が急に上昇するので気を付けて下さい。
生活習慣を改善しても血圧が下がらない場合は降圧薬(=血圧を下げるための薬)による治療を始めます。降圧薬には様々な種類があり、その選択はとても複雑です。1剤で血圧が下がらない場合は複数の種類を組み合わせて内服することがあります。もし副作用が気になったら遠慮せずに医師に相談しましょう。また、ふらつき、立ちくらみ、だるさなどを自覚した場合、血圧が下がり過ぎていることがありますのでお申し出下さい。
◇おわりに
高血圧治療で一番大切なことは、患者さん自身の「治療しよう」という気持ちです。ただし、無理をして頑張りすぎると長続きしないかもしれません。まずはできることをひとつずつ増やしていくのが良いでしょう。
朝霞地区医師会 相川(あいかわ)大(まさる)
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