■咽喉頭異常感覚について
はじめに、のどの構造と主な動きについて簡単に説明します。
口の奥から食道まで続く経路を咽頭(いんとう)といいます。咽頭の最後のあたり(食道の直前)では気管や肺へと向かう呼吸の経路(首の前方部に位置)と、その後ろで食道や胃へと向かう食べ物の経路に分かれます。呼吸の経路の入り口には、声帯という発声をつかさどる器官があり、この声帯は周囲を骨で守られています(この骨は首の外から触れることができ、「のどぼとけ」の所です)。このあたりを喉頭(こうとう)といいます。咽喉頭(いんこうとう)とは咽頭と喉頭の総称をいいます。
のどの動きについてですが、物を食べるという行為には口でそしゃくした後、舌や咽頭の筋力を利用して一気に食べ物を食道まで送り込む動作を含みます。同時に声帯の上部では気管内に物が入り込まないように瞬時にフタ(このフタを喉頭蓋(こうとうがい)といいます)をする動きが起こります。すべて筋肉による精密機械のような見事な連携プレーであります(通常、無意識下で行われます)。
咽喉頭異常とは、このあたりの部位に何らかの不快を覚えるものをいいます。
原因についてですが、まずはのどの違和感が何らかの疾患によって生じていないか確認する必要があります。持病の有無、喫煙や飲酒の有無、生活習慣などを問診後、一般的にはファイバースコープや内視鏡による検査が耳鼻咽喉科や消化器科などで行われ、がんなどの大きな病気がないかを精査します。また近年では食生活や生活習慣、ストレスなどにより胃酸の分泌異常が生じ、病変が食道を経てのどまで影響を及ぼす疾患(逆流性食道炎など)なども増えており、可能性がある場合には消化器科で胃・食道までチェックを行います。これらの検査をして何らかの異常が確認・想定されれば、それに対する治療を行います。
しかし、検査をしても具体的な原因が見つからないことも実際は多く経験します。よくある例として、ストレスを受けている方が不安や疲労、緊張を感じた時に違和感を自覚する場合があります。この場合の主な症状は、のどに何か物が詰まったような異物感や圧迫されたような不快感で、唾液を飲みこもうとしてもうまく飲みこめないと感じる方もいますが、飲食物を嚥下(えんげ)したときには症状が現れにくいという特徴があります。
ストレスは私たちの体に負荷をかけます。体の自律神経のバランスが崩れて交感神経が優位になり、体が緊張状態になります(反対にリラックスした状態では副交感神経が優位になります)。咽喉頭付近や食道周囲の筋肉が過剰に収縮し、内腔(ないくう)が細く締め付けられた感じになります。この結果、異常感覚として、のどの異物感や圧迫感、嚥下時の不快感などを来すと考えられています。また、更年期障害の方なども同様に自律神経のバランスが乱れて同様な症状が起こるとされています。よって、普段は無意識なのどの複雑な動きがとても気になってしまいます。
この状態を改善させるには、まずはのどにおける過度の心配はなさらないよう認識していただきます(がんなどの大きな病気を心配されていた方が、異常がないことがわかった時点で違和感が軽減する例はよく経験します)。同時に漢方薬や安定剤などの薬物療法が緩和目的で行われます。
また、適度な運動や充分な睡眠、休息により自律神経のバランスを整え、交感神経の過度の働きを抑えることは筋(きん)の緊張軽減につながり、さらに気分転換をはかり違和感自体を忘れる時間を多く持つことで、徐々にのどの感覚が正常化していきます。
しかしながら、潜在的に他疾患の可能性もまれながらあるため、しばらくの間は医療機関での経過観察が、念のために必要であるかと思われます。
問合せ:朝霞地区医師会 飛田 正(ひだ ただし)
【電話】464-4666
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