■“法律”をもっと身近に
山崎聡一郎(やまさきそういちろう)さん
「こども六法」著者、教育研究者、写真家、俳優
(熊谷高校出身)
◇「こども六法」ってどんな本?
「こども六法」は、私が大学院を修了した年に出版した本です。
法律を子どもたちにとって分かりやすく解説した本で、書籍の名前に「六法」と付くように、法律を解説するのではなく、条文を一般的な言葉に「翻訳」し掲載しています。名前にこそ「こども」と付きますが、大人でも読み物として楽しめるところが、この書籍の特徴です。
◇自分のために学んだ法律
「こども六法」を制作するきっかけとなったのは、地元の小学校でいじめの被害に遭った経験からです。当時加害児童からのいじめは殴られたり、骨を折られたりする悲惨なもので、今思えば犯罪行為そのものでしたが、そのときは周りの大人は誰も助けてくれませんでした。中学校に進学し、自分の身を守るためにと読み始めたのが、中学校の図書館に置いてあった「六法全書」でした。加害児童を見返してやろうという思いで、弁護士を目指し必死に勉強しました。
◇出版までの道のり
いじめに対する見方が変わったのは、自分にとって平和に過ごせた熊谷高校での3年間のお陰でした。それまではいじめ加害者を見返そうと勉学に励んでいましたが、自分と同じようにいじめで思い悩む人が出てきてほしくないと考えるようになりました。そういった思いから、大学3年生の時に「こども六法」の原案を制作し、その後、クラウドファンディングを実施。2019年に多くの関係者に支えられ、本書を出版することができました。制作にあたっては、子どもたちに「選択肢を増やす力」を育ててもらえるように意識しました。
◇必要な子どもに届いてほしい
子ども向けの法律書が売れないことは出版業界では知れていたことでしたし、元々「必要としている子どもに届いてほしい」という思いで制作した本なので、出版当初はここまで売れると思っていませんでした。しかし、77万部という部数が発行されたということは、それだけ世間に必要とされていたのかなと思います。
◇いじめ問題と向き合い続ける
「こども六法」で「選択肢を増やす」ことの重要性を伝えられたと思うので、今度は「適切なものを選ぶ力」が必要になってくると考えています。例えば、悩み事を相談したいとき、専門の相談窓口の大人に相談するのと、SNSで知らない人に相談するのとでは明確な違いがあります。「適切なものを選ぶ力」は将来的に自分の人生を難しくしないためにも大切であると考えています。
現在は3年前に設立した「こども六法スクール」を通して、子どもたちに法律などを教えながら、一つでも多くの選択肢を増やす力とその選択肢から適切なものを選ぶ力を身に付けてもらえるよう尽力しています。
「こども六法」を通じて、いじめに悩む子どもを一人でも救うことができれば嬉しいです。
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