■「守る」ために、「備える」日々を。
災害や事故、救急の現場で、時に危険と隣り合わせになりながら働く「消防士」。
今月の特集では、「備える」というテーマのもと、現場で活躍する消防士の役割や思いを伺いました。インタビューに答えてくれた、高度救助隊の鈴木さんの言葉を紹介しながら、「いざ」という時のためにできることは何なのか、一緒に考えてみましょう。
■いざという時のための今日を過ごす 人と地域を守る「消防士」という仕事
熊谷市の消防士の中には、大規模災害にも対応できる訓練を受けた「高度救助隊」に配置された隊員がいる。様々な現場を想定した危険予知訓練や、100を超える機材の扱いなどを習得しながらいざという時に備えている、救助隊のエキスパートだ。その一人として、最前線で活躍する鈴木純さんを取材した。
「前職は警察官だったんですが中学の頃から消防士になりたかったんです」元々スポーツマンだっただけあって、体も引き締まっていて、ベンチプレスも130kg上げるらしい。「ほかの消防士はランニングなどのトレーニングを趣味にしている人も多いですね。みんなそれぞれの形でコンディションを整えながら、いざという時に動けるようにしています」
高度救助隊は、その専門性から市内での災害出動のほかに、市外や埼玉県外で大規模な災害が発生した際に、出動する応援部隊としても登録されているという。
「そのため、地道な訓練は欠かせませんね。機材やロープを使った訓練、資機材の点検、災害現場のシミュレーションなど、やることはたくさんあります。よく使う機材の訓練頻度は高いですが、全ての機材を的確に使えるように準備しておく必要があります。災害現場で説明書を読みながら使うわけにはいきませんから」
例えば、備蓄品などであれば私たちも事前に「備える」という準備ができるだろう。しかし、いざ災害が起こったときに現場で動けるか、判断できるか。それは積み重ねでしかできないこともあるいつ起こるかわからないことのために、備える毎日を過ごすのは大変ではないかと尋ねると、「みんなスイッチを切り替えているんだと思います。仕事の時は真剣ですね」と言った。
■自分と仕事に向き合う姿勢 支えられて、気づけば心も強くなっていった。
「災害現場や訓練で、怖いと思うこともあります。だけど、ドラマのように一人で危険な場所に飛び込むようなことはありません。私たち高度救助隊はチームで動きますし、消防として関わる職員全員が連携をとって動いています。災害を想定した図面を見ながらどんな危険があるか、どんな判断をするかをいつもチームで話し合っているんです」
熊谷の消防は風通しの良い職場でそれがチームの強さにもつながっていると鈴木さんは話してくれた。使命感の中に、消防士としての誇りもにじませながら話す姿は、毎日を過ごす中でやりがいを感じながら、自分と仕事に向き合っているように思えた。
消防士に向いている人はどんな人か?そう尋ねると、鈴木さんは少し考えてから答えた。
「やっぱり熱い気持ちを持っている人が向いているんだと思います。正義感にも似たものだと思いますが、人を助けたいという気持ちが、そのまま仕事に向き合う姿勢につながってくると思うので」そう話してくれた後、「救助した方から、お礼の手紙が届くことがあるんですよ。事故直後の現場って、皆さん混乱していることが多いんですが、落ち着いたあと、感謝を綴った手紙で気持ちを伝えてくれます。そういった手紙を読むと、この仕事を選んでよかったなと思いますね。だから、自分の気持ちの強さに自信がなくても、それは消防士になってからでも大きくなっていくものだとも思います
周りの仲間や、自分の気持ちを思い出しながら語るその姿は、消防士としての誇りと使命感にあふれていた。
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