■ミヤマツチトリモチ(ツチトリモチ科)
阿孫久見
山地の林内に生育する高さ10センチほどの雌雄異株の多年生寄生植物です。奇主( 寄生される樹木)の根に寄生してイモ状の根茎を肥大させ、1株に数個の独特な形状をした花穂を地上に表します。この植物には葉緑素がなく光合成はしません。
退化した長三角形状の葉を多肉質の花茎に鱗片状につけますが、普通土の中に埋まって見えにくい場合が多いです。
夏の頃、根茎の割れ目から太い花茎を立て、その茎頂に肉質花穂状でマイクの形をした径2・5センチほどの橙黄色の細かい小根体(こん棒状)という突起する粒が密集した雌花を咲かせます。表面に見えるのは花ではなく突起体で花は外部から見えません。雄株は未発見で、この植物は単為生殖(受粉をしないで種子をつける増え方)する特徴があります。
和名の由来は、深い山に生え、昔この根茎をすりつぶして鳥もちを作ったことから深山土鳥黐の名があります。
竹田では、くじゅう山系でウリハダカエデの根に寄生するものが、ごく稀に観察されます。大分県の絶滅危惧種。花期は7月から8月です。
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