幼稚園や保育所、認定こども園(以下「園」という。)での遊びや生活を通した子どもの学びや育ちは、小学校に入学してまたイチからスタートするものではありません。
本市では、文部科学省の「幼保小の架け橋プログラムにおける調査研究事業」のモデル地域に採択され、令和4年度から「子どもを真ん中にした学びや育ちの実践」に取り組んでいます。
今号では、これまでの取り組みと今後の展開について紹介します。
■幼保小の架け橋プログラムとは―
幼保小の架け橋プログラムは、園や小学校などの教育機関が連携して、子どもの学びや生活の円滑なつながりを支えるプログラムです。
架け橋と呼ばれる期間は、就学前の5歳児から小学校1年生の2年間のことを指します。この時期には子どもの主体性や対話力、一人ひとりの多様性を尊重する遊びや学びが必要となります。
架け橋プログラムは、子どもの教育・保育に携わる教職員だけでなく、子どもに関わるすべての大人が立場の違いを越えて協力し、すべての子どもに学びや生活の基盤を育むことを目指していて、家庭や地域での取り組みもとても重要です。
文部科学省では、令和4年度からの3年間、全国の19自治体をモデル地域に採択し、本市もその一自治体として、架け橋プログラムの推進を図っています。
■架け橋プログラムを進める背景
近年、小学校に入学した子どもが学校生活に適応できない小1プロブレムと呼ばれる現象が問題になっています。教員の話を聞かない、勝手に歩き回るなどの行動がみられ、授業が成立しない状況に陥ってしまうことが懸念されます。
園の教育要領・保育要領・保育指針、小学校の学習指導要領では、幼児教育を基礎として小学校から高校まで連続した教育の重要性をうたっています。
これまでも園児や小学生の子ども同士の交流は行われていましたが、園と小学校の教職員がつながる機会が少なく、幼児教育・小学校教育それぞれの教育に対する理解も充分進んでいるとは言えませんでした。
園では5歳児のカリキュラム、小学校では1年生に向けたスタートカリキュラム(※1)の作成が進められています。それぞれのカリキュラムを生かしながら、より深く幼児教育を意識した、小学校の生活や各教科の学習に滑らかに移行できるような架け橋期のカリキュラム(※2)の開発・実践が求められています。
※1…小学校へ入学した子どもが、園での遊びや生活を通した学びと育ちを基礎として、小学校の生活や教科の学習にスムーズに適応していくことを目指して編成されたカリキュラム
※2…幼保小が協働して、期待する子ども像や育みたい資質・能力、園の活動や小学校の各教科の構成を明確化したもの
■カリキュラム開発に向けて
市では、架け橋期のカリキュラムの開発・実践に向けた基盤づくりから改善・発展サイクルの定着に至るまでのプロセスを4つのフェーズに分け、架け橋プログラムに携わる関係者の共通認識の下、事業を推進しています。
カリキュラム開発に向けては、市立南部幼稚園と南部小学校をモデル園・校に指定し、作業部会1班を立ち上げるとともに、幼保小の関係者や保護者、有識者、教育委員会、児童福祉主管課の担当者で構成する「架け橋期カリキュラム開発会議」を設置。16人の委員がそれぞれの立場から子どもの学びや育ちについて意見を出し合い、「竹田市版架け橋期カリキュラム」の開発と実践、検証作業を進めています。
事業2年目となる今年度は、すべての園・小学校を対象としたアンケート結果をもとに、カリキュラム開発会議において、架け橋期に期待する子ども像を「考えをもち表現する子」「伝え合い認め合う子」「探究心をもち粘り強く取り組む子」に設定しました。この3つの姿をベースに、モデル園・校での公開保育・授業の実践などを経て、竹田市版架け橋期カリキュラムの完成をみています。
○架け橋プログラムの進め方のイメージ
架け橋プログラムの「基盤づくり」から「改善・発展サイクルの定着」に至るまでのプロセスの目安。地域の実態に応じ、各フェーズ間を行きつ戻りつしながら発展していく。
※文部科学省「幼保小の架け橋プログラムの実施に向けての手引き(初版)」をもとに作成
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