■夢の始まりは「好き」 表現の世界に生きる私が伝えられること
子どもたちが自分の将来に希望を抱き追いかける夢。夢の始まりは人それぞれですが、多くの人は「好き」を見つけたときに始まるのではないでしょうか。
令和6年の新春対談では、中学生時代に出会った「好き」を仕事にしている翼和希さんに、夢を追いかけることの大切さについて伏見市長と語ってもらいました。
◇翼和希さん
平成25年にOSK日本歌劇団に入団し、男役スターとして高い歌唱力と力強い踊りに定評がある。枚方市在住で、令和5年8月から市PR大使に就任。10月から放送のNHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」ではヒロインが入団する歌劇団の男役スター役として出演。活躍の場を広げている。
◇OSK日本歌劇団
大正11年に大阪で誕生し、令和4年に創立100周年を迎えた。戦前より宝塚歌劇団・松竹歌劇団(SKD)と並ぶ「三大少女歌劇」の一つとして人気を博し、大正15年に始まる「春のおどり」は大阪の春の風物詩として現在まで広く親しまれている。
訪日外国人向けの日本舞踊ショーや地域振興コンテンツとして地域の偉人を題材にしたミュージカルなど、さまざまなジャンルの公演を大阪や京都、東京、そして福井や栃木、北海道などでも手掛け、OSKレビューの伝統を受け継ぎつつ、常に新鮮な舞台やイベントを作り続けている。
●「好き」を見つけて世界が変わった
市長:本日はよろしくお願いします。
翼:よろしくお願いします。実はこの小ホールは約1年前にOSK日本歌劇団で枚方公演をさせていただいた場所なんです。施設のオープン時に見学して「ここで公演したいな」と思ったその年に実現できてとてもうれしかったことを覚えています。
市長:枚方在住の翼さんが枚方での公演を望んでくれていたというのはうれしいですね。翼さんといえば昨年10月から放送されているNHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」に出演するなど活躍の幅を広げていますが、今回のドラマ出演はどんな意気込みで挑戦されたんですか?
翼:やはり自分が所属する劇団や大先輩がモデルになったドラマなので、どんな役であっても関わりたいと思っていました。演じてみると、劇団の歴史を肌で感じることができ、当時の人物の感情や劇団の歴史を追体験できて本当に良い経験になりました。
市長:何か心境の変化はありましたか?
翼:OSKはドラマの題材になるほど波乱万丈な歴史を持つ劇団なので、そんな力強いOSKをこれからも存続させていきたいとより強く思うようになりましたね。
市長:ドラマでは鬼軍曹のような指導役でしたが、翼さんは指導が厳しくて辞めたいと思ったことはありましたか?
翼:鬼軍曹ですか(笑)たしかに厳しかったですが芸事の世界は厳しいと聞いていましたし、何より自分が好きな芸事を一日中学べる環境がうれしかったので、本気で辞めたいと思ったことは一度もなかったです。
市長:今や歌劇にドラマにと大活躍の翼さんですが、小さい頃から芸事の世界に憧れていたのですか?
翼:今この仕事をしていて「なんでやねん」と思われるかもしれませんが、小さい頃は人前に立つことが苦手でした。歌劇にも興味がなかったですね。
市長:歌劇と出会うまではスポーツに打ち込んでいたとお聞きしました。
翼:中学ではバレーボール部だったんですが、負けず嫌いで、バレーボール中心の生活でした。それがバレーボールを上回る「好き」に出会って一変したんです。
市長:その「好き」が歌劇だったんですね。歌劇との出会いのきっかけは何だったんですか?
翼:私が中学2年生の時、姉が借りてきた宝塚歌劇団のビデオを見たんです。まさに青天の霹靂で。画面の中に映る男役を見て「これや!」と衝撃を受けました。そこからはほぼ毎日、歌や踊りの練習に明け暮れました。
市長:切り替えがすごいですね!大きな変化ですが大変だったのでは?
翼:大変でしたが、そのときは目標がはっきりしていたので歌劇のことしか考えていなかったですね。
●目の前が真っ暗になるほどの挫折
市長:翼さんは当初、宝塚歌劇団を目指していたとか。
翼:受験制限ぎりぎりの高校3年生まで4回挑戦しましたが、残念ながらご縁がなくて。最後の受験で不合格を知った時は目の前が真っ暗になりました。でも、教室の先生にOSK日本歌劇団のことを教えてもらいすぐにレビュー「春のおどり」を見に行って受験を決めました。郵送だと間に合わなかったので、願書は劇団事務所まで直接取りに行きました(笑)
市長:ぎりぎりのタイミングだったんですね。「ブギウギ」のヒロインも最初に受けた歌劇団を落ちていましたね。
翼:そうなんです。だからこそ自分と重なるところがたくさんあって。ヒロインのことを「来週には梅丸少女歌劇団と出会えるから大丈夫だよ!」みたいな感じで毎週応援しながら見てました(笑)
市長:不合格の後に知って入団した歌劇団で立派に活躍されているところも重なりますね。
翼:本当にご縁というのは不思議なものですね。ドラマで「恩人には義理がある。義理を返すのが人情だ」という内容のセリフがあるんですが、私にとってOSKはまさに大恩人で、いつか義理を返したいと思っています。
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