■グッド・イナフ “ほどよい”子育てを
神戸女学院大学 心理学部 准教授
若佐美奈子さん
臨床心理士、公認心理師として児童相談所や学校、大学病院小児科などで活躍。市内で子育てについて講演を行ってきた。3人を子育て中。
○3割は余力に取っておく
親として100%を目指して頑張っていたけど、うまくいかないことばかりで落ち込んでしまう、という話をよく聞きます。実際は7割くらいで良くて、3割は失敗したときにドタバタするための余力として残しておくのがいいですね。
子育てにアクシデントはつきもの。予定どおりになったらラッキーくらいの気持ちがちょうど良いと思います。病気・けが・けんかなど、いろんなドタバタを乗り越えて、親子は成長していきます。
○キラキラばかりじゃない
SNSでは、他人の子育てがキラキラして見える、という声も多いです。SNSでの反応を親の評価だと感じて、競い合ってはいませんか。
現実の子育ては、すてきなことばかりじゃないですよね。他人に見せることを意識すると、どうしても頑張り過ぎてしまいます。キラキラしていなくても、その日一日がなんとか終われば大成功です。
○誰かに任せても大丈夫
子育ては、自分たちでしなきゃと考える親も多いと思いますが、家庭の外とつながることも考えてみてください。
もし1人目を100%の力で育てたのだとしたら、2人目も同じようにすることは難しいかもしれません。親も限界を超えてしまいます。
幼稚園や保育園などのほかにも、「ファミサポ(下欄)」も頼ってみてはどうでしょうか。親にとっては「大変だな」「しんどいな」と思うことなのに、「かわいかったよ」と言ってくださるファミサポさんもいます。子どもにとっても、いろんな人と関わることは、良い影響があります。
・ファミサポ
ファミリー・サポート・センターでは、育児を援助してほしい人と、したい人をマッチングして、子どもの預かり事業などを行っています。会員登録が必要です。
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○力を温存してSOSをキャッチ
子育ては長期間の大事業なので、ずーっと全速力で走るのは無理。苦しくて、続けられなくなります。休憩も必要だし、むしろ、笑顔になれるように親も自分を甘やかしてもいいくらい。その方が、自分にも子どもにも優しくなれるはずです。
でも、決して「いい加減」ということではないんです。人は余裕がないと相手の気持ちを考えたり、様子を観察したりすることができません。子どものSOSをキャッチするのは親の大事な仕事です。そのために力を温存しておくことが大切です。
○親の笑顔は子の心の栄養
だから7割くらいの“ほどよい”子育てがちょうどいいんです。
20世紀のイギリスの有名な小児科医が、子どもを希望どおりに育てようとする親「パーフェクト・マザー」よりも、まあまあの“ほどよい”子育てをする親「グッド・イナフ・マザー」の方が良い、と言っています。
グッド(良い)ではなく、グッド・イナフ(まあまあ良い)というのがポイントです。力を抜いて、「まっ、いいか」とつぶやいてみましょう。親の笑顔は子どもの心にとって何よりの栄養です。
■“ほどよい”子育て 親も子どもも褒めよう
私の子育てが悪かったんだと自分を責めないでください。
もう十分頑張っています。“ほどよい”子育てをしながら、自分も子どもも褒めてあげましょう。
つまづいたときには、ぜひ相談機関へ。秘密を守って話を聞いてくれますよ。
※相談窓口は本紙11ページ
■あなたのカンペキ度チェック
「私の子育ては、頑張り過ぎかも?」という人は、次のポイントを参考にしてみてください。
◆しつけの行き過ぎ
やりたい放題はその子のためになりませんが、行き過ぎていませんか。その子に応じたしつけが大切。次の項目をチェックしてみましょう。
・年齢に適した言葉でのしつけかどうか
・子どもを萎縮させていないか
・子どもが将来、困らないためのものか
・親にとってのいい子を求めていないか
◆悪いところばかり見てしまう
子どもの欠点は、目につきやすいもの。でも、見方を変えれば、長所になるかもしれません。
悪いところを消すより、良いところを伸ばす関わり方にチャレンジしてください。
例えば、幼児期で友達をたたいてしまったら、どうしますか?
〔BAD〕
話を聞かず、「たたいては駄目」と一方的に親の印象を押し付ける
〔GOOD〕
「うまく言葉で言えなかったのかな」「驚いたの」と親が子どもの気持ちをくみ取る
▽チェック
子どもは気持ちを分かってもらうと、落ち着いて考えられるようになります。
□オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン
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11月は秋のこどもまんなか月間。この期間に児童虐待防止のグッズの配架やポスター掲示などの啓発に取り組みます。
児童虐待は保護者1人や一つの機関で解決できる問題ではありません。周囲にいる人が虐待に気付き、行政や関係機関と協力して取り組む必要があります。
問合せ:子育て総合支援センター
【電話】686-5431
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