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特集〝平群の小菊〟

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奈良県平群町

9月9日は重陽の節句。別名「菊の節句」

■100年以上栽培を続ける産地
明治末期より菊の生産が開始されて以降、輪菊を中心に多種多様な品目を生産していました。平成21年に花の産地では全国で初めて地域団体商標登録『平群の小菊』の認定を受けました。令和5年度の出荷本数は約4010万本、6~11月の夏秋期の関西市場占有率約50%を占め、日本一の生産量を誇ります。
なぜこれほどの生産量があるかというと、町の西山間部は朝早くから陽が当たり、夕日は早く山の背に沈むため寒暖差が大きく栽培に適しているからです。また、山地の細かな区割りの畑で栽培しているため、天候や病害虫による被害も広がりにくく最小限にとどめることができます。さらに、標高差による温度差を生かし、夏から秋にかけて安定して収穫できるからです。平群谷「山のぽっけ」だからこそ、品質の良い小菊が育つのですね。

■自慢の小菊を育てる
小菊の収穫は、暑くなるまでに終えるため、朝5時ごろから畑で作業を始めます。最盛期のお盆前は真夜中から収穫を始めることも。蕾の状態を見極めて大事な葉が一枚でも落ちないように1本ずつ丁寧に刈り取ります。「就農して10年になりますがまだ日々勉強です。品質もそうですが、畑全体に綺麗に揃った良い小菊ができた時、自分の努力が報われたと感じます。」と話す農家の城さん。手間と時間をかけて生産者の皆さんが自慢の小菊を育てています。

■「平群の小菊」のブランド力
椿井にあるJAならけん椿井営農経済センターには、室温が10~12℃に保たれた定温庫が整備されており、生産者がほぼ毎日納品できる仕組みになっています。適切に保管された小菊は出荷検査を受け、『平群の小菊』と書かれた大型トラックに乗って市場へ輸送されます。
山間部という地形を生かし、生産者が丹精込めて育てた品質の良い『平群の小菊』は、共撰出荷により品質が保たれ安定供給されることで市場からの厚い信頼を得ています。

※共撰出荷…蕾や葉茎の状態や、長さ、重さなど厳格な規格基準を細部まで定められており、それに合致した作物が初めて「平群の小菊」と認定され各市場に出荷される。

■平群から全国に届くまで
◇栽培~収穫
小菊の収穫時期は5~12月。町内の小菊畑は約84haあります。

◇選別・荷造り
収穫した小菊は重さごとに自動選別し、箱詰めして出荷します。

◇集出荷場へ
町内で生産された小菊はJAならけん椿井営農経済センターの定温庫に集められます。

◇品質検査
小菊の品質や数量等の確認を行います。花や葉の状態、病害虫の有無など細かくチェックします。

◇分荷作業~市場へ
検査後、市場ごとに仕分けし、低温貨物を使用して市場へ輸送します。

◇市場に到着(鶴見花き市場の場合※)
市場に着いた小菊は自動撮影機で写真を撮影後、納品情報とともにデータで管理されます。

◇セリ(鶴見花き市場の場合※)
小菊の取引は、コロナ後に、対面からオンラインになったことで全国どこからでも買い付けできるようになりました。また、従来は早朝からセリを行っていましたが、夜セリに移行されました。

◇出荷
翌朝、出荷トラックに積み込まれ、全国に出荷されます。

※他市場では対面でのセリを行っているところもあります。

■西和花卉部会青年部の取組
青年部とは、42歳までの若手生産者が集まる会です。
◇青年部の活動は?
試験地で新品種の開発を行ったり、販促ツールとしてポスターやミニのぼりを作成したりしています。ポスターの反響が大きく、活気のある産地というイメージを市場にPRすることができました。

◇今後の課題は?
後継者不足で人材確保が課題になってくると思います。青年部でも試験地で生分解性マルチを試験的に導入するなど、将来を見据えて人手を削減できる方法を模索しています。

◇西和花卉部会
青年部部長
亀井 智史さん
父が小菊の生産をしており家業を継ごうと思った時に、青年部で活動している同世代の仲間の存在が心強く、就農するきっかけとなりました。

■今回取材にご協力いただいた小菊農家の方
・西和花卉部会
会長
向井 正治さん

・西和花卉部会
生産副委員長
城 守さん

・西和花卉部会
販売副委員長
植田 育宏さん

◇JAならけん椿井営農経済センター
今年のような猛暑や雨が降らない異常気象が続くと、菊の開花が遅れます。最需要期に適正に出荷ができない等の状況が起こると近年の気候変動に危機感を募らせています。生産者、奈良県とJAが連携し、高温などに耐えられる品種の選定や栽培技術等の対策に取り組んでいます。将来にわたり「平群の小菊」のブランドを守り、各市場にしっかり届けられるよう生産体制の構築に力を入れています。

◇鶴見花き市場
今回取材した鶴見花き市場では、セリはすべてWEBで行われています。コロナ禍以降、セリが対面からオンラインに移行したことで作業の効率化が進み、全国からセリの参加が可能になり取引の幅が広がりました。また、「セリ前取引」に力を入れており、セリにかかる前に適正価格で販売し、他市場より生産者に少しでも利益が出るよう工夫されています。「平群の小菊は高い品質と安定供給できる体制が強いブランド力になっています。」と話す髙橋さん。丹精込めて育てた小菊を適正な価格で取引するという重要な役割を担っています。

株式会社JF鶴見花き
営業部1課次長
髙橋 洋司さん

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