世界遺産・法隆寺の南大門から東にのびる南面大垣のすぐ南側で実施した発掘調査で、聖徳太子が建立した法隆寺(若草伽藍(わかくさがらん))に関係するとみられる溝が見つかり、瓦などの遺物が大量に出土しました。
3月3日(日)の現地説明会には、これらの貴重な遺構や遺物を一目見ようと、斑鳩の里に600人もの考古学ファンが訪れました。
■若草伽藍とは
「伽藍」とは、僧が修行する金堂(こんどう)や塔などの建物のある場所(寺院)をいいます。
法隆寺は、『日本書記』に天智(てんじ)天皇9(670)年に罹災(りさい)(焼失)したとの記事があります。この焼失した法隆寺が「若草伽藍」と考えられるようになり、これまでの調査により、この「若草伽藍」が、聖徳太子が建てた当初の法隆寺であることがほぼ確実とされていますが、塔や金堂以外の主要な建物は明らかでなく、その範囲を含め、若草伽藍はまだまだ多くの謎につつまれています。
■調査成果の概要
今回の調査では、「若草伽藍」の塔や金堂と同じく、北に対して西に約20度傾いた、貴重な瓦などを多く含んだ溝(幅約2m、深さ約50cm、長さ約16m)が見つかりました。
■調査成果の意義
・溝(1)の傾き(方位)から、「若草伽藍」の南方を区画していた溝の可能性があります。
・出土した瓦の年代が若草伽藍の存続時期と同じであると考えられることや、瓦に混じって焼けた壁土片などが含まれていることなどから、これらの遺物は、『日本書紀』の天智天皇9(670)年の記事にある法隆寺罹災後の片づけに伴って溝に投棄されたものと考えられます。
・今回の溝の発見は、謎の多い若草伽藍の寺域を考えるうえで重要な資料を提供しました。また、溝から出土した瓦については、質・量ともに充実したもので、法隆寺の瓦だけではなく、わが国の古代瓦の研究において貴重な資料を提供したといえ、遺構・遺物の両面から若草伽藍の研究が進展することが期待されます。
■春季企画展「発掘調査速報展 新たに見つかった斑鳩のお宝」
展示内容:舟塚古墳、いかるがパークウェイ建設に伴う発掘調査、中宮寺跡周辺遺跡などでの出土品
日時:5月11日(土)~6月30日(日)午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
観覧料:無料
展示替えに伴う臨時休館:5月7日(火)・9日(木)・10日(金)、7月1日(月)・2日(火)
〔今回の若草伽藍跡推定地の調査の出土品も展示しますので、ぜひ、見学にお越しください。〕
※詳細は本紙またはPDF版をご覧下さい。
問合せ:斑鳩文化財センター
【電話】0745-70-1200
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