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いにしえの風 斑鳩文化財センターだより

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奈良県斑鳩町

令和6年度 斑鳩文化財センター 春季企画展
「発掘調査速報展 新たに見つかった斑鳩のお宝」のみどころ
今月号では、6月30日(日)まで斑鳩文化財センターで開催中の春季企画展「発掘調査速報展 新たに見つかった斑鳩のお宝」のみどころについて紹介します。

■法隆寺周辺遺跡(若草伽藍跡推定地)出土の用途不明の瓦製品
5月号広報でお知らせしましたが、若草伽藍跡推定地での発掘調査では、飛鳥時代の瓦が多く出土しました。
それらのなかでも板状の瓦製品は、「型押(かたお)し忍冬唐草文軒平瓦(にんどうからくさもんのきひらがわら)」と呼ばれている軒平瓦に使用される唐草文様を彫った木製のスタンプ(笵(はん))を用いて文様を施(ほどこ)しており、若草伽藍跡はもとより全国でもはじめての出土例で注目されています。この板状の瓦製品について詳しいことはわかっていませんが、遺物の厚みや粘土の接合状況の観察からは、金堂などの建物の屋根頂部の両端に用いられた「鴟尾(しび)」の可能性が高いと考えられます。
また、これまで「型押し忍冬唐草文軒平瓦」の唐草文様の全体がよくわかっていませんでしたが、スタンプ単位全体の姿がわかったことも重要です。そして、この瓦製品に施された文様には、木製の笵の劣化に伴う笵傷(はんしょう)が見られ、この傷は、舒明(じょめい)天皇が建立(こんりゅう)した百済大寺(くだらのおおでら)と考えられている吉備池廃寺(きびいけはいじ)(桜井市)から出土した「型押し忍冬唐草文軒平瓦」の瓦当文様の傷と一致します。つまり、若草伽藍で用いられたこの木製の笵が吉備池廃寺をつくる際に用いられたと考えられ、飛鳥時代の飛鳥と斑鳩における造寺の様相を考えていくうえで重要な遺物となっています。

■舟塚(ふなづか)古墳出土の土器群
古墳の副葬品(ふくそうひん)のなかで、土器は武器や馬具などにくらべると、少し地味に感じる人も多いと思いますが、土器は「年代のものさし」とも言われ、遺跡や遺構(いこう)の年代を決める際にとても重要となる遺物(いぶつ)です。今回新たに確認された横穴式石室内から出土した須恵器(すえき)などの土器を観察すると、舟塚古墳は藤ノ木古墳よりも少し前につくられたことがわかりました。副葬品や石室の規模などをあわせて考えると、舟塚古墳の被葬者(ひそうしゃ)は6世紀中頃を少し過ぎた頃にこの地域を治(おさ)めていた豪族(ごうぞく)(首長(しゅちょう))であると考えられます。
そうすると、藤ノ木古墳より20〜30年ほど前に造られた舟塚古墳の被葬者の後継者が急激に成長して、藤ノ木古墳のような手間をかけてつくられた刳抜式石棺(くりぬきしきせっかん)を納(おさ)めた大型横穴式石室や豪華な副葬品などを備えたお墓をつくることは考えにくいことから、藤ノ木古墳はこのあたりを治めていた首長の墓ではないのかもしれません。このように、周辺の古墳の調査成果と比較研究をすることで、藤ノ木古墳が少しずつ明らかになってくることもあるのです。
展示会では、これらの貴重な出土品を展示しています。ぜひ、この機会にご覧ください。

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