名取市と新宮市は、令和5年に姉妹都市締結15周年を迎えました。紀伊半島の南端に位置する新宮市は、豊かな自然環境のなかにあり、四方を深い森と熊野川、そして青く広がる熊野灘など豊かな自然に囲まれ、古くからの自然崇拝に根ざす『熊野信仰』が受け継がれています。信仰心の現れである熊野速玉大社、熊野本宮大社、熊野那智大社などの聖地と、人々が巡礼の旅をした熊野古道は、世界遺産に登録されていて、世界中から多くの人が訪れます。
熊野速玉大社や熊野古道などの世界遺産が日常の風景に溶け込む「世界遺産のまち新宮市」。広報なとり12月号は姉妹都市新宮市の特集です。この機会に、紀州和歌山の姉妹都市に思いをはせてみてはいかがでしょうか。
■広く愛される郷土料理 さんま寿司
新宮市の郷土料理の一つ、さんま寿司。もともとは庶民的な家庭料理でしたが、鉄道路線の開通に伴い、観光客向けに販売したところ、好評を博し、お店などでも提供されるようになりました。
「昔は、さんまを食べるのは日本でもこのあたりの地域だけでした」。そう話すのは昭和25年創業の徐福寿司店主で、観光協会会長の里中陽互さん。今でこそ全国の食卓で愛されるさんまですが、かつては食品ではなく肥料として漁獲されていたそうです。
かつての新宮市は富裕層と庶民層の差が大きく、さんま寿司は庶民の正月料理の定番だったとのこと。「さんま寿司やめはり寿司など、新宮の郷土料理とされる料理は庶民料理から発展したものが多いかもしれません」と里中さんは話します。
庶民から愛されたさんま寿司ですが、味は絶品です。
通常、生のさんまには独特の渋みがあり、生臭く感じてしまうそうですが、独自の締め方により、その渋みがうまみに変わるとのこと。徐福寿司のさんま寿司は和歌山県優良県産品にも選ばれた逸品です。
■歩ける世界遺産熊野古道
熊野三山(熊野速玉大社、熊野本宮大社、熊野那智大社)を巡る熊野詣(もうで)。熊野詣は日本人の旅(巡礼)の起源ともいわれ、現代でも多くの人が訪れます。
その熊野詣の参詣道として世界遺産に登録されているのが熊野古道です。今から1,200年以上前、平安時代の上皇や貴族たちも歩を進めたといわれています。
熊野古道にはいくつかのルートがあり、新宮市には大雲取越、小雲取越、高野坂、川の熊野古道など複数の古道が通っています。深い歴史と自然によって作られる熊野古道は世界的にも有名な場所で、海外からの観光客も多く訪れます。
■新宮市の由来となった熊野速玉大社
熊野三山の内、新宮市に所在する熊野速玉大社。熊野川を背にし、朱色に輝く社殿の神社です。神倉神社を元宮とし、熊野速玉大社が所在する場所にお宮を建て祀られたことから新宮(にいみや)と呼ばれ、新宮市の地名の由来になったといわれています。
神倉神社は熊野信仰発祥の地とされていて、急峻な石段を登ったところに鎮座しています。神倉神社で行われる御燈祭りは燃え盛るたいまつを持ちながら一番乗りを目指して、石段を一気に駆け下りる勇壮な火祭りで、国指定重要無形民俗文化財に指定されています。
■熊野の地に宿る徐福伝説
今から2,200年ほど前、秦の始皇帝の命により不老不死の霊薬を求めて熊野の地に渡来した徐福。その後も大陸に戻ることなく、農耕や捕鯨、紙すきの技術を伝えたといわれています。
■新宮市長の田岡でございます。
本年は、名取市と新宮市が姉妹都市を締結し15周年と記念すべき年であります。近年、全国的に少子高齢化・人口減少が進む中、今でも人口が増え続けているという素晴らしい名取市さんと交流させていただいていること、本当に有難く思っております。今後もこれまで以上の交流をお願いしたいと思います。
また、来年は世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」が登録20周年となります。名取市の皆様には、この機会に是非熊野三山への参拝にお越し頂き、さんま寿司などの新宮市の郷土料理も味わって頂きたく思います。結びに、名取市の今後益々のご発展と皆様方のご健勝を祈念申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。
和歌山県新宮市長 田岡 実千年
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