今回も前号に引き続き、8月号で答えきれなかった質問にお答えします!
◆第22回 宇宙で植物は育つのか?
Q.宇宙で植物は育ちますか?
宇宙でおいしい宇宙食が食べられるのは楽しそうですが、新鮮な野菜も食べられれば言うことなし!今の国際宇宙ステーション(ISS)は全ての食料を地上から運んでいます。それは、ISSが地上から400kmしか(?)離れていないからできるのです。遠くから見ると、ISSは地球の表面のすれすれを飛んでいる感じです。ちょうど大きなスイカを輪切りにした赤い部分が地球だとすると、皮の表面をISSが飛んでいるような感じです。でも、これから月に行く、さらにその先の火星に行く、という計画になると、簡単に地上から食料を補給するのは難しくなってきますね。そこで、宇宙で野菜や穀物が育つかどうかは遠い宇宙に向かう人間にとって大問題です。
ISSでは、微小重力での植物栽培の実験を行いました。植物の成長には、光、水、温度、ガス条件、栄養条件などいくつかの要素が必要ですが、これらをそろえた上で、重力の影響を調べました。その結果、重力があると「芽は上に、根は下に」と、普通に成長していくのに、ISSでは、かなり方向がばらばらに育ってしまいました。その原因は重力の影響でオーキシンという植物ホルモンの分布が地上と変わってしまうからだそうです。植物を形作る細胞の壁も弱くなっていたそうです。まるで無重力では筋肉も骨も弱くなってしまう人間と同じようですね。それでも水栽培で栄養分と水を補給すれば何とか育てることが可能、という結論でした。
では、月ではどうなるでしょうか。月には地球の6分の1の重力があるので、植物が上と下を間違えることはありません。問題は土ですね。月は「レゴリス」と呼ばれる細かい砂で覆われています。主な成分はガラスの粒子、岩の破片、鉄粉などです。アポロが月から持ち帰ったレゴリスで植物を栽培する実験が行われました。その結果、レゴリスだけでは難しいですが、土を改良する研究が続けられています。月や火星で農業ができるようになれば、移住も夢ではなさそう!でも、火星人には迷惑かもしれません。
(JAXA角田宇宙センター 吉田誠)
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