◆第2回 H-IIロケット
H-IIロケットの第2回は、ロケット本体の両側についているSRB(固体ロケットブースター)についてお話しします。あれは何だろー、何のためについているのだろー、と思っていた人が多いのではないかと思います。さて、その疑問をスッキリ解決しましょう!
JAXA角田宇宙センターで開発したロケットエンジンLE-7は液体酸素/液体水素を燃料とした「液体ロケットエンジン」です。それに対して、両脇についている白いSRBは固体燃料を詰めた「固体ロケット」なのです。液体ロケットの特徴は、自動車などと同じように、エンジンを始動したり止めたりできて、燃費も良く、タンク(ロケット本体)を大きくすれば燃料をたくさん積んだ大型ロケットが作りやすいのです。一方、固体ロケットは、ロケットの形をした頑丈なケースの中にゴムのような燃料を詰めて固まらせます。そして一度火をつけると燃え終わるまで消すことができません。ケースが頑丈なので重たくて燃費はあまり良くないのですが、大きな力を出すのが得意です。
このようなそれぞれの特徴を生かして、燃料満タンで重たいものを打ち上げる時には大きな力が必要なので、LE-7とSRBを同時に着火して、力持ちのSRBの力を借ります。打ち上げから1分半くらいで十分にスピードが出たところでSRBは燃焼終了、切り離されます。その後は、燃費の良い液体ロケットLE-7が打ち上げから6分ほど働いて、1段目の役目を終了、切り離されて、2段目ロケットにバトンタッチされます。
打ち上げの時の写真を見ると、実は炎と煙を出しているのは、固体ロケットのSRBで液体ロケットのLE-7はほとんど「透明の炎」です。水素と酸素を燃焼させると高温の水ができるので、炎の色はほとんどありません。
H-IIロケットは打ち上げの時には全部で260トンありますが、そのうちロケットの本体(真ん中の太い部分)は100トン、両側のSRBは2本で160トンです。推力は、真ん中のLE-7が110トン、小さなSRBは2本で316トンも力を出しています。さすがSRBは小さいけれど力持ち、見た目にだまされてはダメ、という一つの例ですね。
(JAXA角田宇宙センター 吉田誠)
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