文字サイズ
自治体の皆さまへ

ワクチンで守れる命があります。~もっと知ろう、HPVワクチンのこと~(1)

2/34

宮崎県三股町

厚生労働省によると、昭和45年の男性の平均寿命は69・3歳、女性は74・7歳です。それから50年後の令和2年には、男性81・6歳、女性87・7歳と、男女とも80歳を上回っています。平均寿命が延びた理由には、食生活や医療の発展がありますが、ワクチンがあることもその一つです。

■ワクチンとは
新型コロナやインフルエンザなど、わたしたちの身の回りにあるさまざまな感染症の原因は細菌やウイルスです。細菌やウイルスが体に入ると、これらを攻撃し排除する「免疫」が働きます。ワクチンは、この免疫の仕組みを利用したものです。病原性を弱めたり活性を無くしたウイルス、細菌や毒素などから作られたワクチンを接種し、あらかじめ免疫を作ることで、感染症にかからない、かかっても重症化しないようにします。
ワクチンを接種する予防接種には、法律に基づいて市町村が主体となって実施する「定期接種」と、希望する人が各自で受ける「任意接種」があります。定期接種には、全員が接種し、免疫を持つことで国内での感染者が少なく、感染が起こったとしても流行しない状態を維持するためのワクチンがあります(表(1)参照)。そのほとんどを0歳~小学校入学前に接種することが保護者の努力義務となっています。

表(1) 定期接種と任意接種のワクチン一覧表

■HPVワクチン
その中で接種対象者が小学6年生~高校1年生の女子になっているワクチンがあります。それが、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンです。HPVは、性的接触のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。ほかのワクチンは結核や風しんのように感染すると重篤な症状になるものから守るものなのに、なぜ一般的なウイルスであるHPVのワクチンを特定の年代の女子が接種する必要があるのでしょうか。それは、子宮頸がんのほとんどがHPVの感染が原因で起こることが分かったからです。
子宮頸がんは、毎年約1万1千人がかかり、約2900人が亡くなっています。HPVに感染したら必ず子宮頸がんになるわけではありませんが、ワクチンを接種することで将来のがんを防ぐことができるのであれば、接種の必要性を実感できるのではないでしょうか。

昭和20年代までは国民病と言われていた結核。今でも高齢者を中心に発病する感染症ですが、子どもの感染者数は激減しています。この要因として考えられるのが、乳幼児で接種する「BCGワクチン」です。感染症は、その原因の多くが細菌やウイルスといった病原体への感染です。感染を防ぐこと、感染したとしても症状を軽くすることができれば、命を守ることができる。ワクチンはそのためにあります。
HPVワクチンは、HPVの感染を予防し、未来のがんを防ぐものです。がんになっても治療すればいい、検診を受けて早期発見と早期治療すればいいと思うかもしれません。しかし、治療には費用と時間がかかります。後遺症が残るかもしれません。検診を受けることは大切ですが、早期発見はできても、がんを防ぐことはできません。防ぐ方法があるのに防がないのは、もったいないことだと思いませんか。
ワクチンは、自分への感染や重症化を防ぐだけでなく、多くの人が接種することで流行を阻止することができます。さらにHPVワクチンの接種は自分だけでなく、将来生まれてくる命も守ることができます。

■INTERVIEW
宮崎県立看護大学 川越靖之(かわごえやすゆき)教授
私たちは、風邪をひいたらすぐ病院を受診し、安いお金で治療を受けることができます。一方、外国では治療に多額のお金がかかるため、病院の受診自体が難しい国も多く、まずは病気を防ぐ「予防」が重要になります。しかし、日本では病気に対する「予防」の意識が浸透していないように感じます。ワクチンは「予防」の代表であり、健康の基礎です。現在、日本の乳幼児の死亡率が世界でトップレベルに低いのは、乳幼児に多くのワクチン接種が行われているからです。そして、子宮頸がんを防ぐHPVワクチンも、それらと同じく重要なワクチンの1つです。
私は産婦人科医として、これまで多くの子宮頸がんの患者さんを治療してきました。そして、若くして子宮を摘出したり、命を落としたりする患者さんを診てきました。子宮頸がんは、分かってから治療すればいい病気ではありません。命は無事でも、子宮を全摘出したなら妊娠は望めませんし、頸部の円錐切除でも早産や不妊のリスクがあります。さらに、患者さんの4人に1人は5年以内に命を落とすというような、とても恐ろしい病気です。そしてなんと、宮崎県の罹患率は全国でワースト1位です。しかし、子宮頸がんは、その原因の99%がHPVへの感染であり、HPVワクチンで予防が十分可能なことが分かっています。すでに、世界ではHPVワクチンが20年近くにわたり広く普及し、多くの国で効果を発揮するなど、今や若い人の健康に欠かせないものとなっています。WHO(世界保健機関)はワクチン接種を90%、がん検診を70%の女性に普及させることで頸がんを将来、世界から撲滅すると宣言しました。
日本でも、令和4年4月から副反応に関し特段の懸念がないとして積極的勧奨が再開されました。しかし、十分に接種は普及していません。そのため、今も日々多くの若者がHPVに感染していると思われ、産婦人科医として危機感を覚えます。頸がんの多い日本にとってワクチンは正に救世主です。HPVワクチンを早急に普及させ、若い世代を感染から守り、将来の健康に繋げてほしいと思います。

■3月1日(金)~7日(木)は「子ども予防接種週間」
予防接種の受け忘れはありませんか?
詳しくは町公式サイトを確認してください。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU