■「脱腸(だっちょう)」って何?
「鼠径(そけい)ヘルニア」と言われてピンとこない人も、「脱腸」という言葉なら聞いたことがあるのではないでしょうか?
「ヘルニア」とは、「組織が元あった場所から脱出している状態」のことを指します。腰のヘルニアも、椎間板が飛び出すことにより、神経を圧迫するので、ヘルニアと呼ばれています。
鼠径ヘルニアは足の付け根(鼠径部)の筋肉に元々弱い部分があり、そこから内臓脂肪や腸管が皮下に飛び出して起こります。立った時に足の付け根に膨らみがあり、横になったり、手で押さえたりすると引っ込むといった症状が一般的です。
通常、放置しておくと膨らみがどんどん大きくなり、違和感や痛みのような症状が出てきます。膨らみが硬くなり、手で押さえても引っ込まない場合や、強い痛みを伴うような場合もあります。このような状況を「嵌頓(かんとん)ヘルニア」と呼びます。脱出した腸が腐ることもあり、緊急手術や腸切除が必要になることもある危険な状態です。
鼠径ヘルニアは、自然治癒や内服による治癒は期待できないため、原則として、治療は手術加療になります。
脱腸バンドと呼ばれる、体の表面から圧迫するベルトがありますが、これは押さえているだけで、根本的な治療になっていないばかりか、状況によっては、脱出した内臓を傷つけてしまう場合もあるので、あまりお勧めできません。
日本では年間16万人の人が手術を受けていて、男性が85%程度を占めています。
手術の内容としては、飛び出した臓器をおなかの中に戻し、その穴を塞ぎます。従来は穴を縫い合わせて直す方法が主流でしたが、再発が多く、痛みも強いため、現在ではメッシュと言われる医療用の人工シートを用いて補強する手術が行われることが多くなっています。最近ではより小さな傷で手術を行う、腹腔鏡を用いた手術を行うことも多くなりました。
鼠径ヘルニアかな?と思われたら、医療機関を受診しましょう。
〔岩国市医師会〕
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