文字サイズ
自治体の皆さまへ

ふるさと歴史アラカルト

22/24

山口県岩国市

■江戸時代における「源氏物語」

今から約千年前、平安時代中頃に記された大作「源氏物語」は、現在でもよく知られています。その内容が広く知られるようになったのは、成立から六百年以上経った江戸時代になってからでした。今回は江戸時代における源氏物語の広がりを紹介します。
江戸時代に印刷技術や製紙業が発達すると、さまざまな書籍が出版されるようになりました。さらに人々の読み書き能力の向上も相まって、書籍に触れる機会が増え、古典文学も広く読まれるようになりました。
古典文学の中でも、源氏物語は語句の読み仮名や意味を付して理解しやすくしたもの、場面を描いたイラストを載せたものや話をまとめたダイジェスト版など、需要に応じた仕様のものが出版されたことから、幅広い読者を獲得していたことが分かります。また江戸時代に岩国を治めた吉川家には、複数の源氏物語の写本が伝わっています。領主家でも関心が高く、古典の中でも重視されていたことがうかがえます。
このように、広がりを見せた源氏物語ですが、作者の紫式部が記した原本は残っておらず、謎が多い作品でもあるため、江戸時代の学者たちも源氏物語自体の研究に取り組みました。平安時代の様子や日本固有の文化を知るための資料だけでなく、和歌や連歌を詠む際の参考書としても熟読されました。
一方、江戸時代の一般女性としての心得を説いた「女大学宝箱」には、源氏物語の各帖(かくじょう)の和歌などが収録され、庶民の教養としても期待されていたと考えられます。
源氏物語の普及は、美術にも影響を与えました。源氏物語を題材とした絵画や工芸品が数多く生み出されただけでなく、物語の世界を背景にして、江戸時代の様子を描いた作品なども流行し、人々の生活の中に源氏物語らしさが浸透していったとみられます。
時を超えて読まれる人気作品「源氏物語」。時代の流れの中でどのように読まれてきたか知ると、違った視点で今の姿を楽しめるかもしれません。

※5月6日(休)まで岩国徴古館で開催中の企画展「岩国徴古館の今までとこれから」でも、「源氏物語」の関係資料を展示しています。

▽岩国徴古館(いわくにちょうこかん)
昭和20年に旧岩国藩主吉川家によって建てられ、その後岩国市に移管された市立の博物館
住所:横山二丁目7-19
【電話】41-0452
休館日:月曜(祝日の場合はその翌日)

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU