◆やまがたの魅力・強み
[知事]山形には世界に誇る蔵王の樹氷、銀山温泉などの名所のほか、さくらんぼをはじめとするフルーツや、ブランド米の「つや姫」「雪若丸」、「山形牛」や銘柄豚などのおいしい農産物、世界的に高い評価を受けている日本酒やワインなど、たくさんの美食美酒があります。
ラーメンは、人口10万人当たりの店舗数では山形県が全国一、中華そばの外食費では山形市が全国一、「日本ご当地ラーメン総選挙」では酒田のラーメンが第1位です。そばは、日本有数の産地で県内に13のそば街道があることから「ラーメン県そば王国」として、全国に魅力を発信しています。
また、出羽三山に代表される山岳信仰などの精神文化が各地に残る、日本人の心の故郷でもあります。そして何より、温かいおもてなしの心を持つ県民性を誇らしく思います。
[山科]私も山形の多種多様な観光資源や、山形ならではの本物の体験が強みだと思います。特に、欧米豪の旅行者は、商品を買うモノ消費ではなく、地域ならではの体験をするコト消費の傾向が高まっています。観光名所を巡るだけではなく、地域の文化や歴史も深く学びたいというニーズが増えており、地域の釣りガイドと釣りをし、釣った魚を地域の料理人とともに料理する体験や、地域の方から郷土料理を学ぶ体験などを提供しています。
山形には、歴史文化や魅力を伝えられるガイド、職人、料理人がいることも強みです。地域の方々と連携し、一緒に体験コンテンツをつくっていくことが、体験の価値を高め、消費額の拡大やお客さまの満足度向上につながっていくと感じています。
[司会]2018年の冬には、本県で雪をテーマにした国連世界観光会議が開かれました。本保さん、海外の方の反応はいかがでしたか。
[本保]欧米では雪はスポーツの対象、あるいは厳しい環境のイメージですが、同会議は、山形の雪と文化の豊かさを幅広く世界に知ってもらう機会になりました。昔、イザベラ・バードが山形を旅行し、日本の素晴らしさがここにあるという発見をしていますが、これをしっかり伝えていくことが大事です。東北でスノーリゾートというと、私は蔵王が一番だと思っていますが、最近、東北では岩手県の安比高原が、世界的な高級ホテルの開業もあり、欧米の方々の注目を集めています。もっと、蔵王を光らせる工夫が必要だと思っています。
◆観光復活、そしてその先へ
[知事]観光業は裾野の広い産業であり、消費額の拡大に結び付けていく観光の復活こそが、地域経済の発展の鍵を握っています。また、国内外から多くの方が本県を訪れることで、交流人口が拡大し、関係人口の創出や地域の活性化につながります。そのためにも、観光復活の取組みには、観光業だけでなく、すべての産業と県民の皆さんに参加いただいて、一緒に盛り上げていきたいと考えています。
[山科]観光客が増えることで、地域に新たな雇用やサービスも生まれます。当社でも、インバウンド需要に対応するため、正規職員を新たに4名雇用しました。そのうち3名は県外や海外からの移住者です。
また、自社で対応していないツアーをお客さまから依頼される場合もありますが、県内のほかの観光事業者を紹介することで、お客さまをつなぐことができます。観光事業者同士が連携することで、継続的に山形に人を呼び、観光を盛り上げることができると考えています。
[本保]知事と山科さんが、地域一体となってお客さまをお迎えし、その良い効果を地域全体に行き渡らせると話されましたが、それこそが観光の目指すべき姿です。経済、社会文化、環境の三つの面でバランスのとれた観光を「持続可能な観光」と呼びますが、この観点から県全体として良い方向に進んでいると思います。
今、国を挙げて、インバウンドの消費額拡大のための高付加価値化に取り組んでいます。それは富裕層をいかに取り込むかということであり、富裕層が山形県を訪れれば、それに続く層も訪れると考えております。山を高くすれば、裾野も広がりますので、山形県でも取組みが進むことを期待します。
◆新年の抱負
[本保]山形県へのエールとして申し上げますが、高付加価値化の鍵は、一つは世界的なホテル、もう一つはおいしいものといわれています。山形は食べ物が大変おいしく、素晴らしいレストランもあります。県内の主要な観光地に、世界の耳目を引くホテルやレストランができ、富裕層がけん引する形で、山形のインバウンド全体が活性化することを期待しています。
[山科]山形県を拠点とするインバウンドの旅行会社として、今年も情報発信、海外でのプロモーション、山形ならではの体験コンテンツを造成していくほか、インバウンド需要に対応する人材の育成にもより力を入れていきたいと考えています。今年も山形県のインバウンド観光を盛り上げるべく、全力で取り組んでいきます。
[知事]日本の観光振興に長年にわたってリーダーシップを発揮されている本保さんからご助言をいただき、心から感謝申し上げます。また、山形の魅力を国内外に発信し、外国人観光客に本物の山形の体験を提供されている山科さんには大変心強く感じております。お二人には、引き続き、本県の観光復活へのご協力をお願いいたします。
私も、世界に誇れる山形の地域資源を最大限に生かして山形県の発展につなげながら、県民の皆さんが、“真の豊かさと幸せを実感できる山形県”の実現に向けて、全力で取り組んでまいりますので、今年もよろしくお願いいたします。
この対談の模様は、1月7日(日曜日)午後5時から5時30分山形放送(YBC)で放送予定です。
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