■秋の収穫 日本一の「あけび」
~「ものづくり」と「まちづくり」~
山中の自然の弦(つる)にぶら下がった色の浅いあけびを見つけて「これが私のあけびの先祖かもしれないな」NHK BSの新日本風土記の画面に映し出された当町大谷の白田甲子郎さんは、山中を歩きながら見つけた小さなあけびを手にして、感慨深そうに話しておられました。
秋晴れの青空の彼方に見える山々を背に、広々と圃場(ほじょう)整備された田んぼを眼下に眺め、きれいに草が刈られた山裾(やますそ)の園地の中に、そのあけびの棚がありました。そこはぶどう棚に続くあけびの棚で、鮮やかな紫色のあけびがそこかしこにぶら下がり、手を伸ばし触れるあけびの収穫に、ほのかな喜びが伝わってくるようでありました。
私たちが今、店頭で見かける鮮やかな紫色に染まった立派なあけびは、幾世代にもわたり品種の改良を重ねられその結実として世に出回っているものであります。今日の収穫に至るご苦労は、冒頭つぶやかれた言葉が全てを物語っていると思われます。何より甲子郎さんの誠実で優しい人柄とともに、あけびに対する愛情の深さを感じることができました。
何でもそうでありますが、ものを作る、育てる、生産する、その過程には、そこに手を掛ける人の思い、気持ち、心が沁み込んでいきます。不思議とその人の人柄までが伝わってくるのです。書道、絵画、音楽などの芸術作品は、まさにその人の個性や人間性までもが凝縮され、そこから発せられる熱いエネルギーが見る者聞く者に深い感動を湧き起こさせてくれます。りんごやぶどう、あけびなどの農産物、そしてワインや家具などの製品についても同じことが言えます。
さらにまちづくりについても同じです。子どもから大人そして高齢者に至るそこに暮らす全ての人々の思いや気持ちが、まちの風土や顔として現れ、まちを形作っていくのです。
朝日町長 鈴木浩幸
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