■世界の宝を未来に引き継ぐために
富士山が世界遺産に登録された2013年、多くの「宿題」が課せられました。
さまざまな対策を講じてきましたが、残念ながら抜本的な解決には至っていません。
しかし、世界の宝である富士山を未来の世代に引き継ぐことは、いまを生きる私たちの重大な責務です。
山梨県は100年後を見据え、いま始動します。
《ここが変わる!1》
ー通行料2000円ー今シーズンからー
2013年の登録の際、世界遺産の保護・保全をモニタリングするイコモス(ユネスコの諮問機関)は、富士スバルライン五合目について次の3つの「解決すべき宿題」を課しました。
・来訪者が多すぎる
・環境負荷が大きい
・景観が信仰の場にふさわしくない
五合目の来訪者数は2019年に506万人に達し、世界遺産に登録された2013年の2倍を超えました。コロナ禍で減りましたが、2023年は2019年と同じ水準まで戻りました。
富士山への登山者数もコロナ禍以前の水準になり、夜明け前の登山道は、御来光目的の人であふれ、登山者同士が密集し、一歩間違えれば重大な事故が発生してしまう恐れがありました。
さらに夜間、山小屋に泊まらずに一気に山頂をめざす「弾丸登山」の人たちが登山道で寝る、たき火をするといった光景が国内外のメディアで繰り返し報道されました。
未来に引き継がなければならない世界の宝をこのままにしておいていいはずがありません。
そこで県は今シーズンから、五合目から上の登山道で規制を始めることにしました。
登山道は道路法に定められた道路ですので、このままでは県が登山道を規制することはできません。
そこで、登山道の一部と下山道を県の施設とすることで、登山道入り口にゲートを設け、登山者をコントロールすることにしました。
弾丸登山を防止するため、午後4時から翌早朝3時までの間はゲートを閉鎖します。また、登山道の混雑を防ぐため、1日の登山者数の上限を4000人とし、この上限を超えた場合はゲートを閉鎖します。
いずれも山小屋に宿泊予約をしている場合は、ゲートを通過できます。
2014年から五合目より上に登る方に対し、協力金(1000円)のお願いをしてきました。これに加え、通行料として2000円を負担いただくことにしました。
負担いただいたお金は規制をするための経費や、「富士登山適正化指導員」の配置、噴石や落石などが起きても身を守ることができるシェルターの整備など、安全な富士登山のためのさまざまな取り組みに充てます。
信仰の山である富士山。かつて、人々は富士山を神の山としてあがめ、麓から頂上をめざしました。通行料はかつての巡礼路の復興を図ることにも使います。まずは富士山信仰を支えた富士講や「御師」の文化をしっかり調査研究し、文化的価値に基づいた「麓からの登山」をより魅力的なものにしていきたいと考えています。
県では、世界の宝である富士山を守るため、これからも全力で取り組んでいきます。
皆さんのご理解をよろしくお願いします。
◇今シーズンからなにが変わるの?
〔Answer〕大勢の人が富士山に登って混雑すると、登山道が行列になります。誰かが転んで将棋倒しになってけがをするおそれがあります。また、徹夜で登山する弾丸登山者は、急な環境変化に対応できず調子が悪くなる人がいます。
県は登山者の安全と富士山の環境を守るため、今シーズンから以下のことを実施します。
弾丸登山ストップ!:午後4時〜午前3時 登山道入口ゲートを閉鎖します
混雑緩和に向けて:1日の登山者数は4000人に規制します
※山小屋の宿泊を予約している方は通行できます
[対策に必要なお金をご負担いただきます]
・通行料2000円 皆さんからいただきます(同じシーズンでも登山の度に)
・協力金1000円 あくまで寄付ですが、ご理解とご協力をお願いします
※五合目だけに来訪した方は、費用負担はありません
◇登山に3000円って高い?
〔Answer〕富士山では、2014年から山梨県と静岡県が合意して環境保全のための協力金(1000円)をいただいています。強制ではありませんが、登山口で担当者が呼びかけ、登山者の8割の方に協力していただいています。これに加え、今シーズンから通行料(2000円)をいただきます。
世界の名峰でも入山料がかかることがあります。
世界最高峰のエベレストは100万円以上。キリマンジャロや南米アコンカグアは約10万円などです。
いずれも環境保全などに使われています。
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