◆『放射線治療』のことをざっくり知ろう!
山梨大学医学部附属病院 放射線治療科 臨床助教 松田正樹
▽「がんの治療は手術か薬」という誤解⁉
手術や薬物療法と並んで、がん治療3本柱の一角と言われているのが放射線治療です(どういう訳か、影が薄いのですが…)。全身のあらゆるがんを対象として、治癒をめざす根治照射から、症状を和らげる(あるいは予防する)緩和照射まで、幅広い役割を担っています。にもかかわらず、国内では、がん患者さんの約30%にしか、放射線治療が行われていません(欧米と比較すると、なんと半分以下!)。これは、「放射線」という言葉に対して、日本人がある種の抵抗感を抱いているからでしょうか?本稿を通じて、『放射線治療』のことをざっくり知って頂き、少しでもその不安を取り除く糸口になれば嬉しいです。
▽がんに放射線治療が効くのはなぜ?
がん細胞は、全身の様々な臓器に発生します。時に正常構造を破壊しながら、めちゃくちゃに増えて、大きくなっていくのが特徴です。さらに厄介なことに、血液やリンパの流れに乗って、他の臓器に飛んでいくこともあります。
放射線は、これらがん細胞の遺伝子を傷つけることで、増殖にブレーキをかけ、やがて死滅させることができます。放射線をがん細胞に狙い撃ちする技術も、数十年前とは比べ物にならないほど進化しました。
▽イメージできれば怖くない!
放射線治療は1日1回30分程度、週5回(平日のみ)行うのが一般的です。1回で終了するものから、30回以上行うものまでございます。中には、仕事や趣味を継続しながら、外来通院で治療を受ける患者さんも大勢いらっしゃいます。
大事なことは、放射線をからだに当てても、痛くも痒くも熱くもありません(もちろん目には見えませんし、匂いもしません)。放射線治療は心とからだに優しい治療なのです!
▽知られざる放射線治療の効果
ここでは、筆者が厳選した3つの活用方法を紹介します。放射線治療の守備範囲がいかに広いか、ご覧ください。
(1)痛みを和らげる(→進行がん患者さんの約70%が、何らかの痛みに悩まされています)
(2)出血を止める(→「吐血」・「血尿」・「性器出血」など。がんに伴う出血に対して、止血作用を発揮します)
(3)詰まりを解消する(→「食道が詰まって飲み込めない」・「気道が詰まって息苦しい」など。がんを小さくして、閉塞を解除します)
▽ざっくり知った、そのあとは…
最後までお読み頂き、ありがとうございました。「いいね!」と思った方はぜひ、ご家族や友人ともシェアしてみてください。そのふとした会話をきっかけに、「放射線」をより身近に感じて頂き、さらに多くのがん患者さんが『放射線治療』にアクセスできることを願ってやみません。
一般財団法人 里仁会
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