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ほくと歴史めぐり

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山梨県北杜市

◆北杜市に伝わる弘法大師の伝説

今年の4月29日は、旧暦の3月21日にあたります。この旧暦3月21日は「弘法にも筆の誤り」で知られる弘法大師(空海)が高野山で入定(にゅうじょう)した日です。入定は永遠の瞑想(めいそう)に入ることを意味し、弘法大師は今もなお瞑想を続けているとされています。
さて、北杜市内には、そんな弘法大師にまつわる伝説が複数残されています。今回はその中から2つの伝説を紹介します。

▽弘法水(高根町)
昔、弘法大師が念場原を通った時、3里(約12km)もある野原に水が無いため、旅人の難儀(なんぎ)を憐(あわ)れんで、持っていた杖で大地を突くと、たちまち清水がこんこんと湧き出た。これが弘法水である。弘法水を入れて醸造(じょうぞう)した味噌は美味であると評判で、近くの村々のみならず甲府の「たくま」という味噌屋も水を汲みに来ていた。

▽饅頭石(まんじゅういし)(明野町)
昔、御岳(みたけ)に通じる峠でケチな老婆が饅頭を売っていた。ある日、巡礼中の弘法大師がやって来て饅頭を乞うたが、老婆は饅頭を恵んでやらなかった。すると、怒った弘法大師は饅頭を全て石に変えてしまった。そのため、今は饅頭峠と呼ばれるこの付近からは、外側が黄褐色、内側が黒色・黒褐色の、丸い饅頭のような石が出土する。

これらと似た内容の弘法伝説は、実は全国各地に伝わっています。その多くにおいて、弘法大師は超自然的な力を持ち、また、人々に恩恵を与える一方で、冷遇された時は罰を与える二面性も持っています。では、なぜ弘法大師が主人公の似たような伝説が、あちこちで語り継がれてきたのでしょうか。
まず、これらの伝説には、いずれも元となった神話や伝説(外界からの来訪者が水や食物、または懲罰(ちょうばつ)を与える話)があったとする説が有力です。そこに、全国を行脚(あんぎゃ)し高野山の因縁を説いた「高野聖(こうやひじり)」たちが弘法大師信仰を持ち込んだことで、弘法大師の伝承が土着の伝説に取り込まれ、人間離れした力を持つ主人公に採用されたと考えられているのです。また、北杜市の場合は、古代から中世にかけ修験(しゅげん)の山として栄えた金峰山(きんぷさん)へ登る「御岳道」があったため、修験的な性格を持つ高野聖を含め、宗教者が全国から集まりやすい環境でした。もしかすると今回紹介した弘法伝説も、金峰山信仰があったからこそ語り継がれてきたものなのかもしれません。

◇現在の弘法水
大門ダム北西の山中にあり、現在も水が湧き出ている。奥にたたずむ弘法大師の石像は、たくま味噌屋が建てたものといわれている。

◇現在の饅頭峠
北杜市・韮崎市・甲斐市の境にある峠。ちょうど御岳道のルート上に位置し、韮崎市の深田記念公園から徒歩20分弱で行くことができる。

問合せ:学術課
【電話】42・1375
【FAX】25・2019

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