■専門家より
石割山登山道の道と自然の修復について
山梨県富士山科学研究所 主幹研究員
安田 泰輔先生
登山道は自然と親しむことができる場所であり、自然の豊かさや不思議さを体感できます。一方、継続的な踏みつけにより植物体の損傷や裸地化、外来種の持ち込みなど自然環境に対して負荷を与えている場所でもあります。このことは、自然から多くの恵みを受け取っている一方で、その恵みを生み出している自然環境の保全が必要な場所でもあることを示しています。
石割山の登山道修復は登山道近辺や周辺の山中にある丸太や小枝、土壌、岩石等を用いる近自然登山道工法と呼ばれる技法が使われています。この技法は地形に合わせた修復をするため、丸太による螺旋階段があったり、土壌流出防止のために土嚢で凹凸がついた場所があったりと、歩くこと自体が楽しくなるような登山道が整備されつつあります。
この修復の特徴は登山道を整備するだけでなく、土壌流出を防止した結果として、周辺の植生や生態系の保全を目標としている点にあります。昨年から修復している箇所を観察したところ、土嚢から多くの植物が生育していました。この原因として土嚢に使われた土壌から種子が発芽した可能性が挙げられます。この土壌は石割神社前の砂防ダムから採取されたものであり、ダム内には石割山の植物の種子が蓄積されている可能性があります。もしそうなら在来植生の復活に大きな期待が持てます。
一方で、登山者の靴等に付着した種子が運ばれ、発芽した可能性が考えられます。もしそうなら在来種だけでなく外来種も運ばれるため、防除マットを設置するなど防除対策が必要となります。
このように植生は様々な要因により変動するため、登山道の修復から自然の修復へ繋げていくには植生の状態を把握することが重要となります。石割山登山道の道と自然の修復は始まったばかりであり、道を楽しみながら植生の回復状況を観察していきたいと思います。
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