■ワイン特区を活用した醸造家インタビュー
◆髙野美夫(たかのよしお)さん(中村)
◇ワインづくりを志した経緯
高校卒業後に農業をはじめ、25歳の頃から「自分で作ったブドウでワインを飲みたい」と思うようになりました。数人の仲間とも話をしていて、その頃から委託醸造を行ってきました。3年前に山梨市がワイン特区を取得し、小規模ワイナリーの開設が可能になったことで、農業を続けながらワインづくりも行うという自分の夢を叶えようと思いました。
◇ワインづくりへのこだわり
赤ワインには、山梨大学工学部の山川祥秀教授が開発したヤマソーヴィニオン(ヤマブドウとカベルネ・ソーヴィニョンの交配品種)を、白ワインには甲州を使用しています。ワインというと、どうしても歴史ある欧州の感覚を基準にしてしまうことがありますが、ビールやウイスキーのように「日本人の味覚に合わせたワイン」があっても良いと思っています。そのため、私の場合は喉越しの良さも重視していて、飲んでいくうちに「もう一杯飲みたい」と思ってもらえるようなワインづくりを目指しています。
また使用しているブドウの性質に合わせ、主に防腐剤として使われる亜硫酸を加えない無添加、自然派ワインをつくることにこだわっています。
◇ワイナリー開設で大変だったこと
ワイナリーを開設し、自分でワインをつくることに踏み切れたのは、何よりも家族が理解し、協力してくれたおかげです。家族のサポートがなければ、自分の夢であるワイナリー開設を実現することはできませんでした。
ワイナリーを開設してからは、タンクの検定等の細かな申請が多いことに驚きました。近隣のワイナリーと同じ機械を使っているとも限らないので、その点は試行錯誤しながら進めています。
◇今後の展望
農家の間でもワインづくりが広がっていけばいいなと思います。自分のワイナリーで委託醸造を受けるのはもちろん、ブドウを提供した人たちも販売権を持って自分で売れるようになると面白いです。
そして、いずれは(髙野さんのお住まいの地域である)「栗原ワイン」として、同じ土壌の中で様々なワインが生まれるようになればいいなと思っています。
■髙野さんがワイナリーを開設するまで
◇1年間ワインに関する専門講座を受講
髙野さんは山梨大学の「ワインフロンティア」講座を受講し、テイスティングや化学変化、匂いの物質等に関する実験、実地研修等を行いました。
◇税務署・保健所への申請(1年~1年半)
申請書の作成までに半年ほどの期間を要します。申請書は、50ページほどの分量で、計画や申請内容に不備が無いか修正を繰り返し、その後正式に申請書の提出となります。さらにそこから許可が下りるまでに半年ほどの期間を要します。
◇ワイナリーの建設・設備の搬入(半年)
税務署や保健所への申請書提出後、許可が下りるまでの間に並行して、ワイナリーの建設など、開設の準備を実施しました。建設自体はそこまで時間はかからないものの、当初計画からの変更などがあると、申請内容を修正しなければならず、許可までの期間が延びてしまいます。
ワイナリーの準備とワイン醸造の許可が下りて、いよいよワイナリーの開設となります。
■今日からあなたもワイン通? ワイン豆知識
◇ワインの歴史
人類がワインを飲み始めたのは、紀元前5000~4000年頃だと言われている。『ギルガメッシュ叙事詩』に古代バビロニアの王ギルガメッシュが洪水に備えて船を造らせた際に、船大工にふるまったとされており、紀元前58年頃からヨーロッパ全土に広まった。
◇ワインの造り方
赤ワインと白ワインは、使用されるブドウの種類のほかに、醸造方法に違いがある。赤ワインは潰したブドウを果皮や種子ごと発酵させるのに対し、白ブドウは果汁のみを発酵させる。
◇醸(かも)し
赤ワインの発酵時に、果汁と一緒に果皮や種子を漬けて色素やタンニンなどを抽出すること。
◇タンニン
種子や果皮に含まれる渋味成分で、ワインに渋みと深みを加える。
◇テロワール
産地の気候や土壌、地勢などの自然条件のこと。ドイツやニュージーランドなどの冷涼な気候では、酸味が強く果実味が弱くなる傾向にあり、チリや南アフリカなどの温暖な気候では、酸味が弱く果実味が強い傾向がある。
◇ワインの味を決める5つの要素
ブドウ品種、テロワール、造り手、ヴィンテージ(ブドウの収穫年のこと)、状態・飲み方の5つの要素でワインの味わいが決まると言われている。まずは、この中の1つに注目して、お気に入りのワインを見つけてみては?
◇赤ワイン用ブドウ
カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、ピノ・ノワール、マスカット・ベリーA(飲みごたえがある重い品種順)
◇白ワイン用ブドウ
シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリ、甲州(飲みごたえがある重い品種順)
出典:ワイン完全バイブル(井手勝茂監修 ナツメ社)
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