■子育て世帯『住みやすさ』で転入
羽島市長 松井聡
人口増減の物差しには、出生数と死亡数の差を表す「自然動態」と、他地域から転入する人数と他地域へ転出する人数の差を表す「社会動態」があります。羽島市の自然動態は全国的な傾向と同じく、出生数の減少と死亡者数の増加により、2023年は400人を超える減少となりました。
一方、社会動態は20年から22年まで、転出者数が横ばいのなか、転入者数が増加する転入超過が続きました。転出入者の年齢別では、15歳から29歳までが転出増となっており、進学・就職・結婚等が転出理由を占めています。転入増の多くを占める年齢層は、0歳から9歳、30歳代で、子育て世代の家族転入が増えています。地域別の転出入では、名古屋市、東京都が転出超過。岐阜県内の西濃地域、名古屋市を除く愛知県からの転入者増が目立っています。
国が1月に発表した2023年の人口移動報告では、31道府県において転出増が前年より拡大。首都圏の近隣の茨城県、山梨県、長野県が転出超過に転じ、東京都への人口一極集中が再加速しています。愛知県、岐阜県、三重県の名古屋圏でも、23年は1万8321人の転出超過でした。外国籍の方を除くと、転出超過は11年連続で、東京圏への転出が多数を占めています。
東京都への人口集中は、生活コストの高さにより、少子化や人口減を加速させる懸念があります。人口の過密による住宅供給の不足をはじめ、住宅の狭さや価格の高騰が子どもを持つ意欲をそぐおそれがあるからです。
国立社会保障・人口問題研究所の21年出生動向基本調査によれば、望ましい数の子どもを持たない理由の1位は「子育てや教育に金がかかりすぎる」の52・6%でした。また、35歳未満の妻の方では21・4%が「家が狭いから」を理由としています。
政府は、今後も我が国の人口動態のペースが変わらない限り、2100年の人口は現在の1億2400万人から、6300万人に減少すると見込んでいます。2030年以降は、総人口が毎年70万人を超える急激な減少期に入り、50年後には今の70%、2100年には半減するとの予測です。
消費は冷え込み、国内市場は縮減。投資が国内に向かわなくなり、社会全体が深刻な縮小・撤退の道を歩むこととなります。少子化に伴う高齢化率の上昇もあることから、限られた市場の競争激化が格差を増大させることにもつながります。
人口戦略会議からは政府に対し、人口減少の速度を緩和する「定常化戦略」と、今より小規模でも成長力のある社会を目指す「強靭化戦略」を提言。2100年人口を、8000万人規模とする推進体制を求めました。国の責務として、迅速な対応を切望します。
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