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[巻頭特集]国の重要文化財 能狂言面・能装束(2)

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岐阜県関市

■中世の歴史を語る「 能狂言面」「能装束」
春日神社の「能狂言面」は昭和50年に岐阜県重要文化財に指定され、平成22年には「木造能狂言面 附 木造古楽面」として国の重要文化財に指定されました。また「能装束」は昭和31年に国の重要文化財に指定されました。
市では、最新の知見や調査設備で再評価をするために東京国立博物館と東京文化財研究所の協力のもと、令和元年から3年にかけて詳細調査を実施しました。
※附(つけたり)…重要文化財などを指定する際に、文化財本体に関連する物品や資料等を本体と併せて文化指定すること。

○東京国立博物館副館長 浅見龍介(あさみりゅうすけ)さん
《個人的[推し面]はコレ!》
能面 霊男(りょうのおとこ)
出目満照(でめみつてる) 作 室町時代 16世紀
作者がわかる貴重な面。能面は江戸時代以降きまった型を踏襲するようになり、表情が固定化します。
しかし、この面はとても個性的で、眉間の皺や頬骨の張り、その下の肉がそげて尖る顎に至る写実的な肉付きがみごとです。
面裏に「舞歌」と表すのは、越前出目家初代満照作のしるしです。これを写した面もあり、必ずしも信用できませんが、この面はとても出来が良く疑う余地がありません。

◆最新技術を用いた調査
春日神社所有の能狂言面・古楽面61面の科学的調査を行いました。調査はX線CT(コンピュータ断層)調査や蛍光X線などを用いて面の構造、木取り、彩色の成分を観察することで多くの事実が明らかになりました。例えば能面 女(若女)のX線CT画像を見ると、左目内側から鼻の左脇を通る線で左右2材を矧(は)いでいます。年輪はよく似ていますが左右反転しています。春日神社の黒色尉は中央で矧(は)ぎ、やはり左右材は反転しています。
なぜこのような矧(は)ぎ方をしたのかは不明です。今後も考察を進めたいと思っています。

◆調査を終えて
室町時代の面(一部安土桃山時代の作もある)が、これだけの数まとまって残っていることは全国的にもめずらしく、大変貴重です。関鍛冶の春日神社に対する信仰の中で、儀式、祭礼で用い、村人の娯楽にもなっていたでしょう。おそらくは奈良とゆかりの深い面打ちによる作と考えられ装束とともにこれからも大切に守って行きたい文化遺産です。

○東京国立博物館 学芸研究部調査研究課長 小山弓弦葉(おやまゆづるは)さん
《個人的[推し能装束]はコレ!》
縫箔(ぬいはく) 白練緯地四季草花松鶴文様(しろねりぬきじしきくさばなまつつるもんよう)
模様全体が片身替りになっていて右半分と左半分で違うデザインになっています。おめでたい鶴亀だけでなく、鶴の子がいるのがすごくかわいいです。

◆中世の能装束
春日神社の能装束は昔からものすごく有名でした。中世の能装束が戦後に形を保ったままの状態で、縫箔(ぬいはく)や摺箔(すりはく)といった華やかな装束だけでなく、直垂(ひたたれ)や素襖(すおう)、大口(おおぐち)、角帽子(すみぼうし)、腰帯(こしおび)といった室町時代から安土桃山時代に遡る能装束を証言する資料群が、まとまって遺されていることが奇跡的です。全国を探しても春日神社以外にはありません。特に桃山時代の腰帯は他に類例がありません。唯一無二ですばらしいと感じます。

◆調査を終えて
春日神社の能装束は子どもが着て演じる子方の能装束が多く遺されていることが判明しました。
当時、稚児能(ちごのう)(子どもが行う能)が流行ったため、あえて華やかに美しくデザインされており、子どもたちが華やかに舞う姿を風流として愛でていました。特に関は盛んに能が行われていた地域ではないかと考えています。
私は染織の歴史を研究していますので、昔の人々が天然染料で生地を染め、一針一針縫って能装束ができる過程を復元などを通して伝えることで、おのずと能装束の文化的価値は上がっていくのではないかと思います。今の時代の人に語らないといけないことだと思っています。

※この巻頭特集に掲載しているものはすべて春日神社の所蔵です。
※能面・X線CT画像は東京国立博物館が撮影、能装束類は関市が撮影したものです。

※詳細は本紙P.2~P.5をご覧ください。

照会先:文化財保護センター
【電話】45-0500

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