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日本農業遺産「束稲山麓地域」の農林業システム

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岩手県一関市

令和5年1月に束稲山麓地域(一関市舞川地区、奥州市生母地区、平泉町長島地区)の農林業システムが、県内で初めて「日本農業遺産」に認定されました。農業遺産とは、何世代にもわたり継承されてきた農林水産業と、それを取り巻く文化、景観、生態系などが相互に関連し一体となって受け継がれるべき地域(農林水産業システム)を認定する制度です。

■束稲山麓地域の「災害リスク分散型土地利用システム」
束稲山麓地域は、北上川から束稲連峰までの4~6kmほどの狭いエリアに、低平地、山麓地および山地が存在し、生活の拠点集落は、山麓地に立地しています。
この地域は、度重なる洪水害や干ばつなどの自然災害に見舞われましたが、地域一体となった立体的な土地利用や水源管理などにより、自然災害のリスク分散を図ってきました。
また、豊かな農業生態系と個性ある文化、独特の景観を形成していることも特徴です。

■3つの災害に対応する重層的なリスク分散
当地域を流れる北上川は川幅が狭く、低平地ではたびたび洪水害が発生しています。そのため、約300年前から、低平地と山麓地の両方に農地を分散所有し、水害リスクの少ない山麓地では自分たちの食料を確保し、水害リスクがあるものの肥沃(ひよく)で生産力の高い低平地では商品作物を栽培するなど時代に合わせた複合農業が行われてきました。
また、低平地に隣接する山麓地は、大きい支川がなく、水源に乏しいため、干ばつに悩まされてきました。貴重な水資源を棚田などへ供給するため、古くからため池や水路を集落共同で維持・活用してきました。
山麓地の上部に広がる山地では、豪雨による土砂災害のリスクを抱えてきたため、藩政時代の「御林(おはやし)*」の考えを森林組合が継承し、土石流災害の防止と水源涵養を目的に、広葉樹を植樹するなど治山治水の取り組みを行ってきました。

■多様な生態系と特徴的な景観
低平地や山麓地の農地を分散所有し、営農をしながら森林やため池などの保全管理を一体的に行うことで、地域内には多様な生態系が維持されています。
また、特徴的な山容を持つ束稲山や山麓に展開する集落と棚田、北上川と低平地に広がる水田の風景など独特の景観は、地域の特徴として親しまれています。

■コミュニティの継承や地域を守る取り組み
家族経営による小規模農家を中心とした地域コミュニティでは、鎮守社の例大祭や神楽といった民俗芸能などが継承されています。
また、地区外の若手有志の「プレイファーム」が金山棚田のオーナー制を導入して棚田を維持するなど新たな取り組みを行っています。
300年前から受け継がれてきたシステムや、多様な主体の参画による取り組みが評価され、日本農業遺産に認定されました。

*御林…藩政下に領主が管理した山林
※画像など詳しくは本紙をご覧ください。

問合せ:本庁農政推進課
【電話】21-8421

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