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〔特集〕1世紀を超えて成長し続ける 図書館をひもとく(2)

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岩手県一関市

■早川光彦さん(富士大学教授)に聞く 図書館は「人が集う場所」で楽しい「本のある広場」です
開館当時の川崎村立図書館(現・市立川崎図書館)に勤務し、現在は大学で図書館司書の育成に取り組んでいる早川光彦さんに、図書館の役割や魅力を聞きました。

●過疎の村にこそ図書館を
図書館は知る権利を保障するために、入館料などを徴収してはいけない「無料の原則」が図書館法で定められています。一方、どんな図書館をつくるかは条例で決めることになっており、自分たちの課題を、自分たちで解決するための材料をそろえるのが公立図書館です。
かつて私が勤務した旧川崎村には「過疎の村にこそ図書館を」という熱意のある人たちがいました。司書として力を入れたのは、地域の生活に根付いた「村の書斎」をつくること。図書館にはコミックはもちろんゲーム攻略本も置き、おもちゃまでも貸し出しました。村内外から多くの利用があり、住民1人当たりの貸出冊数が全国6位になった時、それを村の人たちがすごく喜んでくれたことが本当にうれしかったです。

●本に囲まれた空間がもたらすもの
川崎村時代、授業で図書館見学に来た小学生にレファレンス(調べもの)クイズをやりました。当時の首相にまつわる問題を出したところ、ある児童がインターネットを使わずに解答を探し当て、大人を驚かせました。その児童は図書館によく遊びに来ており、どこにどんな資料があるのかを把握していたのです。小さな頃から生活の中に多くの知識に触れられる場所があったことで、意識せずに情報リテラシー(情報活用能力)を身に付けたのでしょう。
図書館は「人が集う場所」であり「本のある広場」。そう捉えると、図書館の可能性は大きく広がります。そこには「楽しさ」がなければなりません。楽しいから図書館に来るし、面白いから本を読みます。楽しさが多くの人を知的な場所に連れて行ってくれるのです。本のある空間で過ごす自由な時間は、生活に彩りを添えてくれます。
今、一関市の図書館は司書の数と能力、8館の立地が住民の生活動線にあること、人口規模に対する図書購入費において県内トップクラス。「図書館は成長する有機体」ですから、ぜひ図書館にたくさん要求を寄せてください。そうやって図書館を育てていくことが必要です。住民が使って、一緒に成長していければ、一関市の図書館は5年後、10年後も光を放ち続けるはずです。

はやかわ・みつひこ
富士大学教授(図書館学)、同大図書館長。昭和35年宮城県旧泉市(現仙台市)生まれ。旧川崎村立図書館の開設に向けた公募に応じ、平成6年から10年間川崎村に勤務。主任司書として村立川崎図書館運営に尽力した。福島県南相馬市立中央図書館勤務を経て平成26年から現職。

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