Eerolla on asiaa
フィンランド出身国際交流員による、フィンランドや邑南町の話
■第4回「フィンランドの公共図書館の様々な機能」
フィンランドの色々な機能を持つ公共図書館の中にはユニークな図書館があります。前回紹介した『フィンランドの公共図書館』(吉田裕子・小泉公乃、坂田ヘントネン亜希著)を参考に、その一部を紹介します。
▽住民企画のイベントやコンサート⁈
図書館は、住民からイベントなどに関するアイデアを大切にしていて、各図書館は、その地域の住民の価値観やライフスタイルを表しているといえます。例えば、ヘルシンキのカッリオ地区の図書館では、利用者が積極的に企画を司書に持ち込むだけでなく、イベント当日も運営に携わり、館内で日常的にミニコンサートやスペイン語講座などが開かれています。また、アーティストを応援しているカッリオ図書館ではアート作品が展示され、二次元コードから気に入った作品やアーティストの情報がその場で入手できます。ちなみに楽器を借りることもできます。
また、エスポー市の移民が多い地区では「出会いの場、対話の場」としておしゃべりOKな図書館があり、語学関係のイベントが沢山行われます。職員の名札には話せる言語の国旗のシールが貼られ、利用者はそのシールを確認して職員に話しかけることもできます。
▽行政サービスが利用可能な図書館
また、ショッピングモールの中にある図書館は、住民の幅広いニーズに合わせて複数の行政サービスが利用でき、複合施設の役割を果たしています。サービスコーナーでは、行政サービスに関わる総合的なガイダンスやアドバイスが受けられるほか、首都圏交通局の交通カードや「釣り免許証」なども入手することができ、失業保険の給付手続きもできます。
一番有名なのは前回紹介したオーディ中央図書館です。これまで紹介した図書館の機能の他に、3D印刷ができる「物作りの場」や、音楽ルーム、ゲームルーム、複数のワークスペース、カフェがあり、3階には幅広いベランダもあります。「公共図書館は住民の居間」とよく言われますが、オーディ中央図書館はまさにその役割を果たしています。
▽公共図書館の使命と役割
公共図書館は幅広いアクティビティやサービスを提供していますが、元々の存在意義は何なのかと思う方もいるかもしれません。
最初に紹介したカッリオ図書館はたくさんのイベントを行っていますが、サービス・マネージャー(館長)は、「読書振興が最も重要な任務だ」と強調しています。読書の支援と推進こそが最も中心的な仕事だという信念が分かります。一方で、公共図書館に色々な機能とサービスがあることで、読書に興味がない住民も図書館を利用する機会が増え、多くの住民にとって日常生活の一部になっているのではないかと思います。
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