検査技術科 視能訓練士 小野 悦盛(おのえつもり)
緑内障は、40歳以上の約5%(20人に1人)、60歳以上の約10%(10人に1人)が発症する日本人における中途失明原因1位の疾患です。自覚症状がほとんどなく、気付かないうちに進行していることが多い病気ですが、早期に発見して適切に治療を受ければ、失明することはほとんどありません。そこで、今回は「緑内障」についてお話します。
■緑内障とは
主に眼圧が上昇する(目が硬くなりすぎる)ことにより眼球の奥底にある視神経(映像情報を伝達する神経)が障がいされ、視野の一部に見えにくい部分が生じたり視野全体が狭くなったりします。さらに進行すると視野の中に見える部分がなくなり失明してしまいます。
眼圧の正常値は10~21mmHg(ミリメートル水銀柱)といわれています。
※詳細は広報紙17ページのイラストをご覧ください
■緑内障の種類
遺伝や生活習慣、眼圧や血流、近視の強さなどさまざまな要因で発症する「原発緑内障」、糖尿病やステロイド薬の副作用など他の病気に続いて発症する「続発緑内障」、目の先天的な異常によって発症する「小児緑内障」があります。
原発緑内障は眼圧が20mmHg以上で症状がゆっくり進行する開放隅角(ぐうかく)緑内障、眼圧に異常はみられないのに視神経や視野に異常を起こす正常眼圧緑内障、隅角が狭いため、目の中を循環している房水が流れにくくなる閉塞隅角緑内障に分けられます。隅角が閉塞してしまうと房水の出口がなくなるため、急激に眼圧が上昇し、激しい頭痛や嘔吐を伴う急性緑内障発作を起こすことがあります。
◯原発開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障)
隅角が目詰まりを起こし房水が流れにくくなる
※詳細は広報紙17ページをご覧ください
◯原発閉塞隅角緑内障隅角
隅角が狭くなったり閉塞し房水が流れにくくなる
※詳細は広報紙17ページをご覧ください
■緑内障の治療法は?
緑内障で障がいを受けた視神経や失われた視野を回復させることはできません。治療は眼圧を下げて緑内障の進行を止める(遅らせる)ことが必要で、まず点眼治療(薬物療法)を行います。点眼治療を行っても眼圧が十分に下がらない、あるいは視野障がいの進行が止まらない場合は、手術が必要になります。緑内障手術は、房水(目の中の水)を眼外へ流れやすくしたり、新しい房水の流出経路を作ったりすることで、眼圧を下げます。
■あとがき
緑内障は、早期に発見して適切に治療を受ければ失明することはほとんどありませんが、早期発見には眼科に行かないと分からないことが多く、また診断されても、初期や中期では自覚症状がないために、治療をやめてしまう方が多いことが問題となっています。緑内障と診断されたら、定期的な通院が大切です。40歳を過ぎたら健康診断などで「眼底検査」を受けましょう。
◎視野障害の進行
健康な状態のときの見え方
↓
《初期》
中心のやや脇に暗点(見えない点)ができる。
↓
《中期》
暗点が拡大、見えない範囲が広がる。
↓
《末期》
さらに視野が狭くなり、視力も悪化、日常生活にも支障をきたす。
※中期までは、もう一方の目でカバーしたり目を動かしたりするために、自身では気付かないことが多い。
※詳細は広報紙17ページをご覧ください。
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